23日
フジ前日。バスのメンバー交渉などで忙しく動く。夕方中目へ。図書館、ブックオフダグラス・アダムスの銀河ヒッチハイクガイドシリーズ、3〜5を購入。

上島珈琲店杉山茂樹「4−2−3−1」を一気読み。クライフ、サッキ、ヒディングあたりを中心に、ヨーロッパサッカーにおける戦術トレンドの変遷を追った労作。特にヒディングに関する記述には、筆者の偏愛ぶりが感じられて、非常に読み応えあった。内容自体にはそこまで強烈な独創性はないのだが、要所要所に監督、選手、関係者などに直接取材した成果が挟み込まれてくるため、そのへんのサッカー通きどりの酒場談義と比べると、論の展開に圧倒的な説得力が。ここ数年の流れとして大事だな、と感じたこととしては、両サイドにそれぞれ二人ずつの選手を置く布陣が基本にあって、そこから戦況次第であえて片サイドの選手数を削ったり、増やしたりする中で、攻守連動する形で相手チームとの駆け引きを行なっていくような采配が、何度か劇的な効果をあげてきた、という点。例えば、ユーロ2004でのチェコの初戦、ブリュックナー監督による、右バックのグリゲラを落とした采配や、ポルトガルスコラーリがオランダ戦で、ルイコスタを途中投入した際、ポジションのかぶるデコを右バック気味のポジションに下げ、サイドバックを代えつつも、各サイドに二枚ずつをキープする形の3バックへと移行させた采配とか。
日本にまるで浸透していない基本戦術としては、とにかく両サイドに二枚ずつ選手を置く、ということと、相手トップの人数に対し、センターバックは同数か+一人で守る、ということ、があるだろう。3トップ、1トップを採用するチームが多い状況で3バックで守るのはただのアホ。ただ、アジア予選では相手チームが戦術的に成熟していないケースが多く、放り込み中心の荒っぽいサッカーを仕掛けてくる可能性が大いにあるので、そういった場合には中央を固める布陣を柔軟に使い分けていく必要もあるような気がするが。ただギリギリの場面を除いて、そういった妥協は排して、ヨーロッパのトップモードに沿った戦い方を選択すべきだろうと僕は思う。なぜなら、そこで目先の予選に勝つためにやむなく中央ガチガチの布陣で、内容を伴わない形でいくら勝利を重ねたとしても、いざ本戦に出たときに、全く勝てず、かつ内容的にもボロボロ、という展開に陥るに決まっているからである。それに、そもそも僕は勝ち負け以前に美しいサッカーが観たいと思っているし。その点で考えても、アジアカップオシムは立派だったなあと改めて思う。
サイドで違いを作り出せる選手としては、日本の中では、家長、梅崎あたりに今後のさらなる成長を期待したい。あとはまだ老け込むには早過ぎる石川とか、柏、磐田でそれぞれ活躍する太田兄弟とか、スピードとドリブルが持ち味の選手ももっと代表に絡んできて欲しいもんだ。

その他、「時間」を一章分ほど読み、北区。夕餉。夜は荷造りをはじめねば、と思いつつダラダラ。深夜2時ごろから「リグ・ヴェーダ讃歌」をつまみ読みし、印度哲学のレポート執筆。さすがに時間が無さすぎて、えらく雑な感じに。「宇宙開闢の歌」は妙なユーモアすら感じられるところが面白いなあと思う。

五時ごろからようやく荷造り。変なテンションになり、普段着られないバンドTシャツばかり入れてしまう。結局一睡も出来ず。


24日
徹夜のまま新宿へ。M美勢と合流し、総勢20人強のチャーターバスで、今年も出発。酒を呑み続け、ことごとくPAでトイレ休憩という、去年同様のやりたい放題なスタート。おそらく大まかに分けると四つのコミュニティが混在していたバスだったのだが、去年以上に相互のコミュニケーションがなく、その点に関しては若干寂しいものがあった。しかしまあ概ね楽しく盛り上がって移動。昼過ぎ到着。チェックインが夕方ということでしばしホテル前で昼寝。係員に何度か怒られたり、偶さか友人を見かけたりした後、無事部屋へ。しばし寝た後前夜祭へ。恒例の花火→豆ダッシュで興奮。ブラフマン、ビーチズ、卓球など観て、酒をしこたま飲んで、帰りにD屋からリストバンドを一括大量購入し、ゼロ日目は終了。ビーチズが前夜祭の雰囲気と見事にマッチしており実に良かった。断然CDよりライブ、という感じがした。D屋と電話で交渉していた友人が、人数確認の電話をかけた際に、先方が「もしもし。D屋です。」とのたまった、という話が爆笑ものだった。


25日
朝はホテルでバイキング。食いまくる。昼過ぎ原田郁子を少し覗き、川遊びをした後グリーンでくるり。よく晴れた心地よい陽気の、昼下がりの暖かく、ゆったりとした空気の中、グリーンステージでのんびりと聴くのに、これほどふさわしい曲達があるか、というほどの完璧な選曲。特にアマデウスが素晴らしかった。個人的にははじめてフジに行った2002年の井上陽水のライブを思い出した。これぞ、フジロックという感じの見事なライブだった。また、いいのか悪いのかわからんが、すでに若干貫禄が出てきているなあ、とも思った。衒いなく大ヒット曲を挟みつつも、基本的にやりたい放題な感じがした選曲や、リハーサルの際の茶目っ気とか、ピアノを二人で演奏してみたりといった、細かな遊び心を感じた演出なんかにも、余裕や自信を強く感じた。

オアシスに移動し、レッドでGossip,Vinesを観た。前者はYeahYeahYeahsのカレンOほどの魅力は感じなかったものの、ボーカルの娘の存在感が抜群。先輩フェミニズムパンクガールズバンドのBikini killの曲をカバーしたり、曲間にNirvanaMadonnaの超有名曲をアカペラで披露したりと、面白い趣向も多かった。Vinesはまあ別に好きではないのだが観た。Ride with Meがかなり盛り上がっていた。グランジまんますぎるだろうという感じの音ではあったが。その後しばし酒飲んでダラダラし、仮眠とってマイブラ。数曲聴いて、ライブで観るもんじゃないな、と確信して移動。ホワイトでBootsyを観た。JBリスペクトバンドが最高だった。どうでもいいが、帰りの日に、自分が、JBの真似してた人をBootsyと勘違いしていたことがわかったのは、恥ずかしかった。

オールナイトフジは入場制限で入れず、仕方なく、電気グルーヴ、just the band!と悪態をつきつつレッドに移動して、Hiphop祭。ダンルサックはウイットに富んだ歌詞なんだろうなという感じは随所に伝わってきたのだが、さすがに日本語でも聞き取りづらいラップの歌詞を、全く知らない状態かつ英語で聴き取るのは不可能で、そのへんは残念だった。唯一知っていた曲では、元の歌詞に替えて一日目の出演バンドたちをjust the band!とコキ下ろしており、笑えた。続いてGrandmasterflash。歴史の流れを把握していないのだが、はじめてターンテーブルを擦った人、なのかな。懐かしの名曲群をかけまくり、客をひたすら煽りまくる、熱のこもったプレイぶり。なぜかMCでは再三に渡り、自分の日本での知名度を疑問視する質問をぶつけてきた、ジャパンタイムズの記者に対するディスに終始していた。必要以上に自分の顔アップを見せ付けるVJなども含め、笑えて踊れる充実した時間だった。最後はShing02。新譜を聴いていなかったためか、新曲の歌詞は思った以上に聴き取れず。ただ、衣装やメンバー構成を含め、全体の雰囲気はいままでにない感じで、新鮮だった。最後にドレミの歌から400になだれ込む流れが実にカッコよかった。長いものをぶった切っていくことを改めて決意しモドリ。気絶眠。


26日
二日目。早くもダラダラしたスタートに。夕方のADFまでは何も観ず、仮眠をとったり、ダラダラしたり。四時前後にようやく宿を出て、まずADF。まあまあ。その後だらけてメシなど食いPrimal Scream。最初の数曲のみ観る。新曲が何曲か聴けてよかった。オレンジに移動、Mark Stewertを観た。音源での凄まじいまでの音の切り貼り具合や、ダブ処理には及ばなかったものの、Adrian Sherwoodのライブでのダブ処理をバックに、充実のライブ。やはりMark Stewertの声は抜群にカッコよろしかった。酔って覚えてないが多分最後にWe are all prostitutesをやってくれたのも嬉しかった。Sparksを観たかったが友達が全員Underworldで集合していたのでそちらに移動。後半の名曲ラッシュに間に合い、満足。夜はレッドマーキーへ。Erol Alkan、Richie Hawtinを観た。途中気づいたら寝ていたり、サングラスを落としテンション下がったり、足が異常に疲れていたりで、そこまで全開では盛り上がれず。五時過ぎモドリ。即寝。

27日
ラスト、三日目。始動は昨日に続き遅め。激しい雨に遭い、三日間ではじめて雨具を身にまとい、三時前ぐらいに出発。苗場食堂で久々に会った友人と飲み、そのまま合流。雨宿りも兼ねてレッドマーキーへ。Go!Teamを数曲観る。PA後方にパラソルと椅子を持ち込み、なぜかQueenを熱唱しながら、開演を待っていた外国人の一団がとてもいい感じだった。雨が小雨になったところで移動。長時間ダラダラし、少しヘブンを冷やかした後、オレンジへ。Dub Sextetを三十分ちょい。菊地氏関連のプロジェクトでは、純粋に音楽としてだけなら一番好きかもしれない。パードン氏の絡み方が実に良いなあ、と。続けて横のヘブンに戻り、Lee perry先生。もうスクラッチしてしまって大変な感じだった。終始頭からケムリ出てるし、MC終わりにおかしな笑い方するし。もう大変だった。I legalize ganja!とか大声で叫んでいて、笑った。とんでもない爺さんだ、しかし。最高のライブの余韻を残したまま、再びオレンジへ。Bill Laswell presents Method of Defiance。雷雨の影響かやたらと空いていたが、最高だった。気がする。途中から友人のマッコリを尋常ではないペースで飲んでいたら、どこかで記憶が飛んでいた。後で近くで見ていた友人に聞いた話では、誰もいなくなったオレンジコートのステージに敬礼して、ありがとうございました!とか何度も叫んでいたそうなので、きっとすごくいいライブだったともう一人の僕も感じていたのでしょう。ふと我に返ったときにはすでに午前三時。MusicもADFもAdrian Sherwoodも終わっており、なぜか膝に大きな痣が出来ており、ズボンは考えられないほどに泥だらけになっており、とワケのわからない展開。どうやら、何度も転んだり人にぶつかったりしていたようで。久々にひどい酔い方をしたもんだ。最後に毎年恒例のパレスオブワンダーのストリップ系の出し物を満喫し、朝方、五年連続六回目のフジロック、終了。ベストアクトはくるりLee Perry、ベスト飯はオアシスのタイ料理店グリーンカレーレッドカレー。共に超レベル高かった。


28日
朝最後のバイキングを食べ、昼過ぎバスが来る。モドリ。なぜか二階建て、宴会席仕様のバスだったため、山道で酔い、嘔吐。仕方ないので寝るのは諦め、一階の先頭に座ったまま最後まで過ごし、北区。夕餉。風呂。気絶眠。

29日
昼前に起床。昼過ぎから友人と待ち合わせ、渋谷でシャマラン新作。「自殺サークル」や石井輝男映画にも似た、とにかく適当で投げやりな人物達の死なせ方に、くすくす笑いつつ観ていたところ、横にいたカップルの女性が、上映開始後しばらくして席を移動しだし、さすがに驚いた。映画は大傑作。取ってつけたようなハッピーエンド?も含めて、見事。終了後友人と近くの喫茶店で語らう。心療内科の裏話など、なかなか面白かった。夜は千駄ヶ谷に移動し、もらったタダ券で別の友人とプロ野球観戦。たまたま国立でサッカーの代表戦をやっていたため、やたらと道が混んでいて、きつかった。試合は、これから、というところで降雨コールド。ちょっとした雨で終わってしまうのも、野球観戦の醍醐味の一つかも、などと、タダで入った身だからこそ考えられる呑気な言い訳を自分に言い聞かせ、納得。これまたたまたま中止になっていたらしい、サッカーの客と時間がかぶってしまったため、渋谷まで歩いて、そこから北区。久々に女子と単独で長時間会話したためか、ひたすら下品な話題ばかりを振ってしまった。

30日
朝から早起き。7時半ぐらい。9時から目黒のいかれた建物で教習。技能3、学科4。
昼頃終了し、そのまま渋谷へ。東急でダグラス・サーク特集。当日券をキャンセル待ちでなんとか購入。「悲しみは空の彼方に」。卑怯だなと感じるほどに周到に、運命に翻弄される人々の不幸が描かれる。特に終盤の、たたみかけるように不幸が連続する展開には、あざとさを感じつつも、目から大量の汗が出てしまった。アニーが部屋に入ってきたサラジェーンの友達に対し他人のフリをする場面でまずかなりの人数が鼻をすすりはじめたのだが、まだそこでは耐えた。たださらに後の、アニーが死を迎える直前の場面で、そんな状況にあってなお、周囲の人間達への感謝の言葉ばかりを語り続けるくだりで、ダムが決壊。どんなに斜に構えた人間をも感動させずにおかないこの作品を、登場人物が不治の病にかかるだけで泣けるそのへんの子に見せたとしたら、どうなってしまうんだろうか、とか思ったり。終了後はたまたま来ていた友人二人とベローチェで長話。二時間ほど。その後、一旦五反田に移動。久々に「うどん」へ。「夏の夜カレー」を。トマト、茄子、鶏肉、バジル、ピーマンという最強布陣。美味すぎ。あらゆる毛穴という毛穴から、あの寡黙な店主さんに、笑いながら「汗すごいですね。」と言わしめるほどの、大量の汗が吹き出た。食後、渋谷にモドリ。なぜか数時間前までいた劇場の場所を間違えて迷ってしまい、開始に間に合わず。再び汗をかいてしまう。「心のともしび」は、まあ良質の恋愛メロドラマ、という感じだった。汗をかきすぎて水分が失われたせいか、今度は危ない場面こそあったが、目から汗を出さずに乗り切ることが出来た。またもたまたま会った別の友人二人と少し話し、北区。遅めの夕餉。気絶眠。

31日
昼前から教習。のはずが寝坊。学科に出そびれる。技能4。今日からマニュアル。半クラッチの感覚がまるでつかめない。難しい。終了後は何に対しても集中できず、だらだら。「時間」を読み終えた。夜池袋で元109店員と世界平和について共に考えた後、北区。オシム本やら滝本本やらをつまみ読み。日記を一週間ぶん書きまくり。そして今。