2006-10-01から1ヶ月間の記事一覧

ブライアン・デ・パルマ ミッドナイト・クロス(BLOW OUT)

デパルマの初期の傑作と言われているらしい。トラボルタの若さにびっくり。 二分割カメラなど、彼独特のカメラワークは当時からのもののようだ。 空から撮影したカーアクションのシーンなどは緊迫感、迫力があったが、全体としてはあんまりピンとこず。 連続…

オースター 鍵のかかった部屋

所謂ニューヨーク三部作の最後を飾る作品。 例によって書くことや読むことにまつわる思索を含みつつも、ラディカルさとは無縁の物語として成立していた。ちょいメタ。三部作はどれも共通して探偵小説の枠組みを用いつつも、探偵小説に必要不可欠な要素を物語…

リチャード・ドーキンス 利己的な遺伝子

十章までの議論は、一言で言ってしまえば「動物やわれわれ人間は、自らの遺伝子を後の世代に少しでも多く残すために生きる生存機械である」という仮説を手を変え品を変え、様々な視点から証明しようとしているもの、と要約できる。 主に用いられているのは、…

魚楠キリコ 南瓜とマヨネーズ

まあ、上手いかな。オチはさらっとしすぎててなんとも、という感じだったが。 この人の絵柄はずるい気がしなくもない。映画化した時に、この人の絵柄が醸し出すニュアンスがどう変化するのかはちょっと興味ある。

石井輝男 黄線地帯

探偵もの。例によって脚本は適当な感じだったが、彼の他作品に比べると、それほど派手な破綻は見られなかった。そのせいでかえって、作品としては面白味に欠けるものとなってしまっていた。ベタな描写がある程度きちんと機能してしまったことで、ただの二流…

五木寛之 サイレント・ラブ

ポリネシアン・セックスについて五木のおっさんが熱く語っている本。アホ。

中島らも 愛をひっかけるための釘

なかなかのロマンチストぶり

千原兄弟 はじめTOUR 右から二番目の星に住む迷子達の声

やはり死を扱ったコントが多い。三作品一気に観ると、さすがにある程度はいくつかのパターンに大別できてしまうが、土台としていくつかのパターンを用いつつも、細部では常にそれをズラして新しい笑いを作り出している感じがする。 らも氏のエッセイにもあっ…

中島らも 空からぎろちん

エッセイ集。適当に図書館で借りてみた。 彼の本はなぜかいままで手に取ったことがなく、はじめて読んだ本である。 あまり力を入れずに書いても、平均して一定以上のレベルのものが書ける数少ない人間の中の一人であるように思う。自分が知っている範囲では…

バーセルミ シティ・ライフ

まさにやりたい放題という感じの短編集。一文で完結する作品やら、全く意味をなさない言葉の羅列に終始する作品やら、実験的すぎるのではというほどの作品ばかり。 ちょっとやりすぎなんじゃないか、という気もした。正直ややついていけなかったかも。これだ…

千原兄弟 PINK

見事。モンティパイソンに似た工夫で全体での統一感もよく出ていたし、なにより尖りまくっていた当時のジュニアの「怒り」がネタに上手く昇華されていた。 中でも「妹よ・・・」と「ルームメイト」がすごいよかった。 事故死、カルト宗教、レイプ。きわどい…

千原兄弟 「金龍飛戦」

デビュー以来二本目のライブビデオ。素晴らしかった。収録コント六本、いずれも非常に笑える。しかし、この作品のおもしろさは、現在そこらじゅうのバラエティ番組に蔓延しているような、軽い笑いとは完全に異質のものである。生死の境界線ギリギリのところ…

増村保造 「刺青」 「卍」

「刺青」 谷崎原作の映画化。増村・若尾コンビが冴える。 若尾文子が抜群にいい。艶がある。彼女の妖艶な雰囲気を醸し出す、魅せ方も見事。特に鎖骨周辺と刺青の書かれた背中の撮り方が絶妙。襖越しに遠くから撮るショットが多かったのも印象に残った。「卍…

康芳夫 虚人魁人康芳夫 国際暗黒プロデューサーの自伝

ネッシー探検隊、オリバー君招聘、猪木対人食い大統領アミン、空手家対虎など、さまざまなイベントをプロモートし、これまで数多くの型破りな仕掛けで人々を楽しませてきた康芳夫氏の自伝。 仕掛けをうつ際の資金の集め方なども含め、あまりのスケールの大き…

テッド・チャン 「理解」「ゼロで割る」「人類科学の進化」「七十二文字」

松本人志 定本「一人ごっつ」

誌上「一人ごっつ」、倉本との対談、インタビュー、一人大喜利傑作選、という構成。インタビューのパートで出てきた話として、「写真を説明しよう」にしろ、「一人大喜利」にしろ、とにかくパターンを被らせないでいくようにしてる、というのがあった。これ…

園子温 紀子の食卓

個人的には「自殺サークル」の悪意に満ちた演出が好きだっただけに、わざわざ続編と銘打ってこんな映画を撮る必要があったのか、という点には非常に疑問を持った。 言いたいことはわからなくはないが、いくらなんでも説教臭すぎる。古屋兎丸の役柄を宮台が演…

保坂和志 世界を肯定する哲学

作者自身が序文で指摘しているように、中盤までは手探りで書いていたせいか、他ジャンルの人達がよく書きそうな、どこかですでに聞いたことのあるような議論に終始しているが、後半は彼の特異な視点がよく出ていておもしろかった。中盤までの展開は、物理学…

テッド・チャン 顔の美醜について―ドキュメンタリー

とにかく、良く出来ている。最初の着想を広げていくのが非常にうまい作家だ。 サブタイトルにドキュメンタリーとつけているだけのことはある。 メディア論や脳科学系との絡め方が見事。フェミニズム的な発想にもふれてくるあたりも、いい。カリー肯定派を、…

山室静 北欧神話

創生に関する物語が、今あるような形での世界が誕生したときには、そこにあらかじめ、最終的な滅びへとつながる要素が組み込まれていた、という描かれ方をしているところが面白かった。(神々と巨人という二大勢力があって、その下に人間その他、という図式…

藤子F不二雄 気楽に殺ろうよ

テッド・チャン 「バビロンの塔」 「地獄とは神の不在なり」

前田日明 パワー・オブ・ドリーム

前田の自伝本。第二次UWFを旗揚げした三十歳ごろまでの前田の半生が綴られている。 プロレス的文化に適応して馴れ合うことをあくまでも拒み続け、独自のスタイルを追求し続けた彼のロマンチストぶりが、現在のPRIDEやK- 1の隆盛を生んだということか。 いく…

テッド・チャン あなたの人生の物語

よく言われることらしいが、やはりヴォネガット「スローターハウス5」を思い出さずにはいられなかった。生まれてはじめて自分で金出して買って読んだ小説であり、最も好きな小説は、と問われたら今でも間違いなくこの作品と即答するほど、自分としては愛着…

太宰治 女生徒

短編。いまいち。主人公の女子高生が電車内で老人見て、こんなんなったら終わりだな、みたいなことを考えるくだりは笑えた。

深沢七郎 東京のプリンスたち

こんなに思いっきり、ロック音楽そのまんまの小説ははじめて読んだ。 学校も女も親もめんどくさい。タバコの煙が充満するロック喫茶で爆音でエルヴィス聴くのがとにかく最高。そういうこと。俺達のように、ロックをききながら全身をリズミカルにゆすれば、あ…

こうの史代 『夕凪の街 桜の国』

広島出身の作者が、原爆を真正面からテーマとして扱った作品。 被爆したものの即死を免れた主人公の女性が、自分が生き残ってしまったことにある種の罪悪感を抱えつつも、やがて愛する男を見つけ、幸せを手に入れる。しかしその直後被爆の影響で体調が悪化、…

業田良家 ゴーダ哲学堂 空気人形

上手い。

志村貴子 ぼくは、おんなのこ

短編集。どの作品もそれなりに読ませるが、ある朝目覚めたら、全ての人間の性別が逆転していた、という設定の表題作「ぼくは、おんなのこ」が中でも出色の出来。ジェンダーの問題について色々考えさせられる設定としては、両性具有であるとか、無性、第三の…

Rブローディガン 「ロンメル進軍」

訳は高橋源一郎。原文つき。高橋氏の意訳ぶりを事細かにチェックできたのはおもしろかった。ブローディガンに関しては詩の方が好きかもしれない。 とにかく心に沁みる。泣ける。