テッド・チャン 顔の美醜について―ドキュメンタリー

とにかく、良く出来ている。最初の着想を広げていくのが非常にうまい作家だ。
サブタイトルにドキュメンタリーとつけているだけのことはある。
メディア論や脳科学系との絡め方が見事。フェミニズム的な発想にもふれてくるあたりも、いい。カリー肯定派を、所詮ブスの理論武装だと切って捨てる生徒が出てきたりとか。南伸坊「顔」でも出てきたが、顔の美醜の判断は、実は普段我々が思っているよりも、様々な複合的要素が絡み合って構成されているというのは間違いないだろう。美醜判断という、要素に分解できない総合的、直観的判断の中には、言語化できない多彩な情報を無意識に処理する過程が含まれている、というような話。

短編だとやはり、ある程度アイディア一発勝負みたいになってしまう部分があるが、それは仕方のないところだろう。