2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

北野圭介 ハリウッド百年史講義

実にわかりやすくためになる。新書の鑑のような本。 作品論にとどまらず、製作側の立場と観客側の立場をも含めて包括的に語る、というかなり無茶な方針で書かれているにも関わらず、見事にまとまっていた。自分の知識量の問題もあるんだろうが、60年代までの…

ヒエロニムス・ボス

地獄の事細かな描写が非常にグロテスクで、また奇妙な魅力を発していた。 敬虔なクリスチャンであるがゆえに、天国を描くだけでなく地獄をもきっちりと描ききらねばならないのだ、というオブセッションが働いていたとしか思えない、シュールレアリスティック…

セルゲイ・パラジャーノフ ざくろの色

これを果たして「映画」と呼んでよいものか。 誰もが一見してわかるように、映画製作において暗黙の了解となっているような約束事、映画史が積み重ねられていく中で徐々に形成されていったような映画の文法、そういったもの一切から完全に逸脱し切っている彼…

マーティン・スコセッシ タクシードライバー

初デートでポルノ映画に誘うところが一番笑った。

若松孝二 エロティックな関係

内田裕也が主演、さらには共同で脚本も手がけた異色作。なぜか全編パリロケで、内田裕也と宮沢りえの二人は劇中七割方フランス語で会話する、という謎すぎる設定。 ものの見事に女に騙される裕也さんがステキ。

深沢七郎 笛吹川

誰かが言ってるかもしれないが、ちょっと「百年の孤独」に似ているところがあるように思った。笛吹川は架空の土地ではないし、「百年の孤独」のように何世代にも渡って一族の興亡を描く、という形式をとっているわけでもないが、無駄な形容を一切せず、淡々…

コンドームの普及こそ最大の罪なのかもしれない。 あんなもんがあるから恋愛などという厄介な観念が必要となってくるのだ。おそらく。 今日接した二作品にもあからさまに出ていたし、古事記や創世記なんかの書かれ方を考えてみても明らかなことだが、人間の…

フォルカー・シュレンドルフ ブリキの太鼓

大人は大概セックスのことと戦争のことばっかり考えている馬鹿な人達だ。だから僕は成長を止めた。とにかくブリキの太鼓を叩き続けた。やがて時は流れ戦争は終わり、親は二人とも死んで僕は孤児になった。いつの間にか僕は21歳になっていた。僕は父の墓に…

立川志の輔 中村仲蔵

実在した歌舞伎役者中村仲蔵の活躍を元に練られた古典落語。 歌舞伎と落語、ジャンルこそ違えど日本の伝統芸能という意味では相通ずるものがある二つのジャンルを跨いで志の輔師匠のイリュージョンが炸裂する。 本当の意味で、伝統を引き継ぐということは、…

しばらく文章書いてないと文章力が落ちていかん。日本語の文すら書けなくなっている。 精進せねば

福島聡 少年少女 1〜3

少年漫画と少女漫画の間のグレーゾーンを上手く描いている作品が多いことからつけられたのだろうタイトルからして絶妙な、作者のストーリーテラーとしての技量の高さを感じさせる珠玉の短編集。一つ一つの話に一切ハズレがない。アベレージ高すぎ。 細部まで…

モネ展

art

微妙な色のグラデーションを使って、光の当たり具合による見え方の違いを表現していた、霧や雪の描き方が印象的だった。 光の表現はモネが生涯を通して最もこだわった部分であるらしく、代表的作品である睡蓮シリーズや点描で書かれた風景画などに実験精神が…

ラス・メイヤー ファスタープッシーキャット・キル・キル!

おっぱいの大きなお姉さんが殺したり殺されたりしていてとてもアホだなと思いました。東映PV映画なんかに影響を与えてるのか、それとも同時多発的に出てきたもんなのか、ってのは気になるところ。個人的には則文のがツボだけど。 音楽やら衣装やらはこっちの…

ダーリンは乙女ばしかにかかってるっちゃ!

マゾッホ 醜の美学

SMがらみの描写は少な目だが、非常におもしろかった。 女性を好きになるかどうかに、その女性が理知的かどうかなどという問題は、あんまり関係ない、というかため息の出るような美しさを持っていれば内面がどうとかそんな野暮なことには関心が向かない、とい…

今月はかなりの躁状態が続いていたがようやく落ち着いてきた。そしてそれに伴い本や映画に対して不感症になりつつある。良作を観たり読んだりしてもそこまでグッとこない感じというか。ムダに時間があるから色々手を出してしまうのが逆によくないんだろう。…

黒沢清 回路

現代の生きづらさうんぬんみたいなストーリーはどうでもよかったが、やはり撮り方は見事。そのカメラ位置からはじまってこう移動するのか、といちいち感心させられるシーンが多かった。カメラ内の人や物の動きと、カメラの動きのシンクロぶりなんかも気にな…

橋本治 橋本治の古事記

橋本治先生による古事記のわかりやすい現代語訳。うんことかげろとかを訳語に使っていて非常にポップ。ギリシャ神話なんかを読んだ際にも思ったことだが、結局セックスと戦争あるいはそれに準ずる戦いの2つで歴史はまわっているんだ、という昔の人々の思想が…

ザッヘル・マゾッホ 風紀委員会 残酷な女達

・風紀委員会 馬鹿だなー。 繻子(サテン)に対するフェティシズムは白てんに対するそれと同じぐらい頻出だったが、読んでいてふと自分が幼稚園ぐらいの頃サテンが大好きで毎日寝るときに枕元においてさわってから寝ると安眠できていた、というのを思い出し…

業田良家 詩人ケン

うーん、なんか上手く消化しきれてない感じがする。読み終えて妙な違和感が残るというのはある意味では作品に力があったということなのか。ラストのラーメン屋やりつつ年増の嫁とセックスしたり、という描写や、ホームレスの友達が実は金持ち、という展開な…

ヘンリー・ダーガー展

art

初期の色使いの淡さにびっくりした。特に楽園パートの鮮やかさとは遠い感じだった。黄色や赤より水色や薄紫なんかが中心的に使われていたり。 さらに初期の作品は画風が「非現実の王国」の挿絵群とはかなり違っていておもしろかた。 ダーガーの部屋の写真は…

国貞 恋のやつふち

春画。当時人気のあった話のパロディ作品という体裁をとっている。いまだとエロ同人誌のノリに近い感じか。バター犬なんかも出てくる。今も昔も人間は馬鹿だなあ、と思える作品だった。

エリック・ロメール クレールの膝

ロメールもありかな、などと思っていた時期もあったがやっぱりこれはない、と再認識。 浮気を認め合う進歩的夫婦など糞食らえと橋本先生も言っておるわけです。カメラがほとんどバストアップのつなぎ、ってのもつまらんし。クレールの体つきは確かにエロかっ…

町田康 権現の踊り子

菊地成孔 スペインの宇宙食

ブラスト公論

宇多丸師匠をはじめとする五人の公論クルーが、毎回一つのテーマに沿って語った、雑誌BLASTの連載をまとめたもの。 絶妙にヒネリの効いた居酒屋談義という感じ。 あまり堅くなりすぎないよう、遊び心を残しながらも、一本芯の通った議論が展開されてい…

エンタクシー相撲特集見事 結局プロレス性、ってとこに着地するんだけどそれでも村松氏の文章は泣けた。 同体−>物言いー>取り直し、の流れについてだけであそこまで書けるのは凄い。慧眼!前近代性、儀式性を強調、ってことになると、やっぱ天皇持ち出して…

古谷実 わにとかげぎす

ぐだぐだ。

野口晴哉  整体入門

カフカ 断食芸人 流刑地にて 判決 掟の門 喩えについて

最初の四つはまさにカフカ節、という感じ。悪く言えばワンパターンとも言えるが。 特に断食芸人は妙なユーモアがあってよかった。まあ長編のが面白いな、という感じもしたのも確かだが。喩えについて、はわずか二ページながらなかなかのもんだった。超越的な…