2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

宇野邦一 ドゥルーズ 流動の哲学

これで日本人の書いたドゥルーズ入門書をとりあえず三冊読んだことになるわけですが、この本が一番アカデミックな感じでした。いい意味で言えば正統派なんでしょうが、真面目すぎるというか、用語はやたらと難解なものを使用している割に、発想の飛躍力が足…

ジミー・ウォング 片腕カンフー対空飛ぶギロチン

香港のどうしようもないハイブリッド感が満載というか、とにかく突っ込む気力すら失せるような謎展開のオンパレード。明らかにインド人じゃないヨガの使い手の手は、いかんとも形容しがたいほど中途半端に伸びるし、ギロチンは片腕なだけで誰でも殺すから、…

クエンティン・タランティーノ ジャッキー・ブラウン

タランティーノは日本的な要素の消化の仕方が気に入らなかったりで、あまり好きな監督ではないのだが、「ジャッキーブラウン」は非常にツボにはまった。実に面白かった。金を通じてしか信頼関係が築けないところとか、いかにもアメリカ的な、疑心暗鬼と恐怖…

吉本隆明 共同幻想論

最近は感覚的に好きなもの、自分に向いているものがわかってきたので、そのあたりは上手く取捨選択しつつ、読む本、観る映画を決めているのですが、たまには肌にあわなそうな本も読んでみるか、買っちゃったし、ということで長年積読状態だったこの本を読ん…

岡村靖幸 純愛カウンセリング

対談集。名越康文氏、岸田秀氏、二丁目のゲイの人、スワッピング夫婦、あたりとの 対話が特に面白かったです。岡村ちゃんは純粋すぎるがゆえにずっと苦しみ続けている、というのがよくわかる本でした。いみじくも名越氏が指摘しているように、その苦しみから…

リチャード・エルフマン フォービデン・ゾーン

偏差値ゼロのミュージカル映画でした。登場人物が全員白痴以下で素晴らしかったです。 特に教室のシーンは白眉。腹が痛くなるほど笑った。

ジャック・ヒル コフィー

ブラック・セクスプロイテーション映画。ほぼあらゆる登場人物が死ぬのですが、皆実にステキな死に方をしていました。ある悪役の、これ以上間抜けな顔が存在するのかという程に間抜けな死に顔がアップになった瞬間、場内の誰かが何の遠慮もなくデカイ音で屁…

アラン・シリトー 長距離走者の孤独

春樹マラソン本の流れで読んでみました。 長距離を走る、ということに徐々に興味が涌いてきています。

ドゥーガル・ディクソン他「フューチャー・イズ・ワイルド」

人類亡き後の未来に生きる生態系を妄想するという、スケールのでかい本。 独我論とは完全に無縁の世界観が素晴らしい。個々の動物云々以前に、そもそも今温暖化がどうしたとか騒いでるけど、500万年後に氷河期来て哺乳類はほぼ全滅!とか面白すぎます。 具体…

ジャ・ジャンクー 東

画家を追ったドキュメンタリー。いまいち乗れず。 「無用」のデザイナー同様、自己の中だけで作品制作を完結させない姿勢、観察者の視点を作品に導入しているあたりが、ジャンクー自身の映画に対する発想と共鳴しているところなんでしょうが、画家のいかにも…

吉田健一 酒宴

酒に酔う内に、時間や空間の感覚が崩れていき、飲んでいる相手や、自分を含めたあらゆる人、モノの同一性が消滅し、あらゆるものが交換可能になっていく様子が、氏独特の変幻自在の文体で書かれている短編。文章の流麗さに嫉妬すると同時に強く心を動かされ…

深沢七郎 千秋楽

ビートたけしや浅草キッドの通った浅草フランス座のような、幕間に芸人や踊り子の軽い出し物があるストリップ小屋を舞台にした長編小説。どことなくヴァージニア・ウルフ「ダロウェイ夫人」を思わせるような、捉えどころのない文体が、なかなか面白かったで…

今日kamipro最新号を立ち読みしたのですが、森達也氏、菊地成孔氏らが亀田問題、秋山問題を中心に、朝青龍、沢尻エリカ、安部元首相なども射程に入れつつ、「バッシング論」を展開しており、楽しく読みました。菊地さんが、秋山、亀田両者に絡めて、おそらく…

廣瀬純 美味しい料理の哲学

人文系の本としては異常なぐらい楽しく読めた。 「と」「そして」で二つの一見何の共通点もないかのように見える二つのものを華麗に結びつける手さばきが見事。見習いたい。文章に嫉妬した。

三池崇史 極道恐怖大劇場 牛頭

終始、様々な断片に症候の濃厚な徴候が現れていると見せかけて、恐怖を煽っておいて、全部ギャグで落とす、という感じで、なんというか、リンチの映画をもとにコントを作ったような映画でした。とにかくリンチと似た部分が多いのですが、恐怖より笑いが勝っ…

武富健治 「掃除当番」

短編集。なんというか独特の味がある感じ。笑えるものと恐いものが半々ぐらい。 おそらくどの作品も笑いと恐怖の境界線を鋭く抉っているからだと思われる。 個人的には表題作が最も印象的だった。たかが掃除当番の話だから、と設定の時点である程度笑える舞…

檜垣立哉 ドゥルーズ 解けない問いを生きる

小泉さんの本よりは、わかりやすく書かれていた。あれは、入門書っぽさがない本だったが、こちらは真っ当な入門書、という感じ。 哲学史的な位置づけは、大体想像通りだったが、ちゃんとなぞれてよかった。デリダとは似てる部分もあるけど、根本的に向いてい…

ジャ・ジャンクー 「無用」

フィルメックス映画祭にて鑑賞。環境や歴史に配慮した斬新なコンセプトを確立し、パリコレにも進出した中国の服飾デザイナーを追ったドキュメンタリー映画。ジャンクーはやはり、現代中国では最も面白い映画監督だと再確認しました。 デザイナー個人の作品と…

吉田健一 金沢

これ以上陳腐な言い方はないが、すごい小説、の一言。何箇所か置いていかれるところがあって驚いた。さすがにここまでぶっ飛んではいないな、俺も。めちゃくちゃな小説だ、しかし。大好き。

ヒッチコック めまい VERTIGO

ラストが面白かった気がしたがどんなんだったか忘れた。ドッペルゲンガー的な恐怖から開放される前に観たかった。今観てもバカバカしいというか、いまいち入り込めない。惜しいことしたな。

山下淳弘 中学生日記

間とタメに尽きる。呼吸の笑いというか。日本独自かもしれないな、こういうのは。英国にもないだろう、多分。爆笑はしないけど、終始クスクス笑いしつつ観た。似ている人はあんまりいない気がする。強いてあげれば漫画家の小田扉ぐらいか。突いてくるツボが…

村上春樹 走ることについて語るときに僕が語ること

村上春樹の長編が長い(上下巻、三巻組のときもあるか)のと、彼が長距離走を毎日のように行なっていることには、多分関係があるのだろうと思いました。現代は昔よりも明らかに、長大かつ、一貫性を持った物語を書き上げるのが困難な時代です。現役の作家で…

ストア派こそがエピクロス派であり、エピクロス派こそがストア派である。 吉田健一は、まさにこういう感じだな。うん。

セックスとかやるという表現は攻撃的で良くない、まぐわうという日本語の美しさを再確認すべき、といった記述が、立ち読みした某整体師の本に書かれていていたく感激したことを今思い出した。視線を交わすというところから出来た言葉だとか。いい話。これか…

バランスについて

バランスがとれていれば、所謂幸福と言われる状態が常に持続する。もちろん完璧なバランスを取ることは不可能なので、完璧な幸福状態にいるというのもまた不可能なのだが、まあ微分でいうと極限というか、ギリギリそれに近いところまではいけるだろう。病気…

トーベ・ヤンソン たのしいムーミン一家

ヤンソンはこの作品ではじめて人生肯定的な結末を迎える物語を書き上げることができたらしい。それまでの作品には第二次大戦におけるフィンランドの惨状が色濃く反映されていて、童話なのに絶望的な結末だったとか。本作もかなり諦観に近いものを感じるとこ…

ヴァーツヤーヤナ カーマ・スートラ

おそらく世界最古のハウトゥセックス本なんじゃないか、と思うのだが、男尊女卑的な傾向は措くとして、基本的に書いてあることが今の本とたいして変わらん、というのは笑えた。人間の考えることなんてそうそう変わるもんじゃないわな。甘噛みの仕方とかまで…

早川いくを へんないきもの

文体の臭みはなんとかならんかな、という感じがした。ウケ狙いで書いてすべってる感じできつかった。ただ、紹介されているいきもの自体はいろいろと興味深かった。 最強の生物クマムシをはじめとして、皮膚病を治すドクターフィッシュ、雄が弱すぎるボネリム…

安酒を深酒はあぶないのでやめようと思う。階段から落ちて死ぬのはいやだし。

小泉義之 「ドゥルーズの哲学 −生命・自然・未来のために」

以前大学の便所の落書きで、人生の意味とは何か、といったことが書いてあるのを見つけたことがあった。その問のまわりに、色々な人がそれぞれの意見を書き込んでいて、なかなか面白かった。「そんなんねーよ」とか、素朴に人生の意味を信じている感じの書き…