宇野邦一 ドゥルーズ 流動の哲学

これで日本人の書いたドゥルーズ入門書をとりあえず三冊読んだことになるわけですが、この本が一番アカデミックな感じでした。いい意味で言えば正統派なんでしょうが、真面目すぎるというか、用語はやたらと難解なものを使用している割に、発想の飛躍力が足りない感じがしました。おそらくはこの人は秀才系ですね。個人的には小泉氏の著作の方が得るところが多かったです。

ドゥルーズの各著作について一章ずつを割いて記述する、という方法は、ある面では有益な情報源になりましたが、僕の好みとしては、彼の著作全体を積極的に誤読し、そこから得たインスピレーションを元にエッセイ風の議論を展開しているような、何人かのドゥルーズ者達の書き方のほうがピンと来ました。彼等の書き方のほうが、ドゥルーズ自身が推奨する、所謂「ドゥルーズを使う」という発想に近いような気もします。僕が読んだ範囲では、廣瀬純氏、小泉義之氏、丹生谷貴志氏あたりは、特に過剰な誤読からカルトに接近している感じもないので、楽しく読めると思います。まあ、人によってはぶっとんでてよくわかんねえ、って印象になってしまうとは思いますが、そのへんはお好みで。