武富健治 「掃除当番」

短編集。なんというか独特の味がある感じ。笑えるものと恐いものが半々ぐらい。
おそらくどの作品も笑いと恐怖の境界線を鋭く抉っているからだと思われる。
個人的には表題作が最も印象的だった。

たかが掃除当番の話だから、と設定の時点である程度笑える舞台を整えてはいるわけだが、いかんせん結末部は恐すぎてドキドキした。屈託のない人間が、自分の感じている楽しさや、正しいと信じている感覚を、気づかないうちに他人にも共感するよう強制している可能性。それに触れた悩める人間が、リア充の他者への憎悪からさらなる負のスパイラルに突入していってしまう可能性。これは恐い。この視点については、決して忘れず常に頭のどこかにとどめて置く様にしたい。最近屈託から解放されたことで舞い上がり気味で、やや自分の感覚を他者に共有してもらおうと働きかけすぎているきらいがあるので、自戒の念を込めつつ、この視点は肝に銘じておきたい。

この表題作のような状況は、とりわけ初等教育の現場では避けて通れない難題の一つだろうと思う。そういう意味でも、「鈴木先生」は近々読みたい。