ジャ・ジャンクー 「無用」

フィルメックス映画祭にて鑑賞。

環境や歴史に配慮した斬新なコンセプトを確立し、パリコレにも進出した中国の服飾デザイナーを追ったドキュメンタリー映画。ジャンクーはやはり、現代中国では最も面白い映画監督だと再確認しました。

デザイナー個人の作品として完結してしまうことなく、材料の糸を織るところから、実際に作業工程に関わる人物全員と顔を合わせてコミュニケーションを図る姿勢、場所や人々の歴史に対する視線、それら、ブランド「無用」の斬新なコンセプトはまるでジャンクーの映画に対する視点そのもののようで、非常に面白かったです。

上映後のティーチインでも語られていましたが、彼の映画を劇映画/ドキュメンタリーの二分法で語るのはアホの極みだと思います。ようするに彼は、今作で撮影対象となった女性デザイナー同様、自らの作家性のみに立脚した作品づくりを行なわない、というだけの話であり、ジャ・ジャンクーの映画というのは、ジャンル分けを超越した次元に到達しているのだと思います。デザイナーの女性がコンセプトの核心部分を語る場面と、終盤のお得意パターンの、何人もの炭坑夫がカメラ目線でうまそうに煙草吸うシーンでは泣いてしまいました。煙草のシーンは特に良かったなあ。反則。

端的に言って、彼のスタイルは創作のあり方自体が非常に斬新という感じがして、大好きです。普段の映画では頻出の、男女間のすれ違いのモチーフも、今回は撮影対象の関係からか全く出てこず、それは上映後の爽快感につながっていたような気がします。煙草を持っていくのは忘れてしまったのですが、なぜか上映終了後に、隣に座っていた美しいおばあちゃんが話しかけてきてくれて、面白かったです。昨日も酒飲んでたらご近所の面白ばあちゃんが飲み会に乱入してきて笑いましたが、最近はどうもばあちゃんにモテるみたいです。おもしれー。マナカナ論に続き、近々「おばあちゃん論」を執筆したいです。