千原兄弟 はじめTOUR 右から二番目の星に住む迷子達の声

やはり死を扱ったコントが多い。三作品一気に観ると、さすがにある程度はいくつかのパターンに大別できてしまうが、土台としていくつかのパターンを用いつつも、細部では常にそれをズラして新しい笑いを作り出している感じがする。
らも氏のエッセイにもあったが、笑いの世界における高いオリジナリティを持った人間というのは、他人のネタや笑いのパターンはもちろん、自分の過去に作り出した笑いのパターンも、過去の形をそのままなぞることなく、常に更新し続けていくことの出来る人間を指す。非常に数少ない高度なオリジナリティを持った芸人の一人として、ジュニアは数えられるように思う。

細部で彼独特の才能を特に感じるのは、比喩表現の巧みさである。いくら笑いを構造的に分析出来たところで、こういう部分でのセンスが無いと、おもしろいネタは作れないだろう。大喜利の能力の高さ、すなわちセンスがやはり図抜けている。このへんは真似しようと思っても無理。
あと印象的なのは、無意味なダンスが結構よく出てくること。これもタイプはやや違うがパイソンでも何回か出てきている。ナンセンスが正しい意味からのズレで笑いを生む方法で、ノンセンスが無意味なものを提示して笑いを生む方法であるとすると、このダンスはノンセンスの領域に属する。ノンセンスで笑いを生むのには、ナンセンス以上にセンスがいる。 なんか駄洒落みたいな文章だが気にせず続ける。
なぜかと言うと、ズラして笑いを生む場合ある程度理詰めでもいける部分があるのに対し、無から笑いを生むのは、百%センスによるものだからである。組み合わせのセンスの有無はでかい。らも氏の例えで言うとロートレックのアイロンと蝙蝠傘うんぬんの話につながってくるところ。


ところで、最近のTVでの確実に丸くなったジュニアと、初期から中期にかけてのここ数日観た三作品での彼を比較して考えてみるにつけ、思う。

やはりピーターパンもいずれは大人になってしまうのだ。まあ仕方ないことなんだろう。