こうの史代 『夕凪の街 桜の国』

広島出身の作者が、原爆を真正面からテーマとして扱った作品。
被爆したものの即死を免れた主人公の女性が、自分が生き残ってしまったことにある種の罪悪感を抱えつつも、やがて愛する男を見つけ、幸せを手に入れる。しかしその直後被爆の影響で体調が悪化、まもなく死に至ってしまう、それまでの過程を描いた「夕凪の街」、その数年後、彼女の家族が、被爆者の家族として、病気が発症するかもしれないという恐怖や、周囲からの差別に直面しつつも力強く生きていく様をつづった「桜の国」の二部構成。

非常に良く出来た話であるというのは間違いないのだが、ちょっと泣かせにいきすぎなんじゃないかという気もした。特に前半の「夕凪の街」なんかは、メロドラマ的な要素が強すぎて、ややあざとく感じてしまった。原爆の問題をどう考えるか、となった時に、煽情的な要素は、もちろん問題を自分達にひきつけて考えるためには、ある程度は必要になってくると思うのだが、いきすぎは危険なんじゃないだろうか。