キム・ギドク 春夏秋冬、そして春

山中の湖の中心に浮かぶ寺を舞台に、主人公の一生を四季の変化と対応させて描いていた。
まず舞台が見事。冬湖面が凍ってしまったところとか、最後に山の頂上から寺を見下ろすシーンなんかは壮観。よくこんな場所を見つけてきたな、という感じ。全体的にとにかく画面の美しさが印象的。山水画を観ているようだった。
展開も文句のつけようがなかった。仏教的なテーマ、輪廻や業なんかが中心。

春 メダカ、蛙、蛇に石巻きつけて遊ぶ。師匠にばれる。言葉で叱らず、寝ている主人公の背に石を巻きつける師匠にグッと来る。自分で巻いた石を全部ほどいてきたらほどいてやる、と師匠。ほどきにいくとメダカだけ死んでいる。泣きながら供養する。

夏 療養に来た女と恋に落ちる。最初は乳ももうとして拒否されたりするも、受け入れてもらうことに成功。青姦がばれたのを機に二人で逃走。主人公のエロすぎる表情が完璧だった。

秋 女が他に男を作り自分を捨てたことに耐え切れず、彼女を殺害し逃亡。再び寺に戻ってくる。自殺を試みたものの一喝され、憎しみの心が消えないと相談する弟子に師匠は、突如床に猫の尻尾で般若心経を写経しはじめる。怒りのこもったナイフでこの文字を彫れと師匠。主人公を捕まえに来た警察にも一日待ってもらい、必死で完成させる。師匠は警察にも手伝ってもらいカラフルな色を塗る。全て完成したのち出頭。


冬 師匠が老衰で死を決意。かつて弟子が試みた方法(紙に「閉」と書いて目鼻口に貼る)を用い、薪の上に座禅組んで自決。その後主人公、おそらく刑期を全うし戻ってくる。監督自身で演じているとか。凍った湖から仏像を掘り出したり、氷の上で演舞したり。滝が凍っているところなどもあり、非常に幻想的な光景。顔を隠した女が赤子を連れて寺へ。女は寝る時も決して顔を見せない。朝主人公に気づかれる前に帰ろうと試みるも、あやまって割れ目から転落。死亡。死体を見つけた主人公、顔を見てカルマを実感。石を背負って仏像を持って山を登る。このあたりはほぼシシュポス。山の頂上に仏像を安置。そこからの風景は見事。

再び春 残されていたガキが成長。再び生き物で遊んだり。輪廻を強く印象づけるラスト。山の頂上で光る大仏が映って終了。

師匠が猫の尻尾で般若心経を書くところとか、監督自身が凍った湖の上で演舞を披露するところとか、相変わらず意味の良くわからない過剰なシーンも多くあった。そこがこの人の面白さの一つなのは間違いない。

台詞の少ない映画が多い監督だ。しかし。