カンパニー松尾 くるみのブログ

なぜ森下くるみが魅力的なのか。
もちろん見た目が可愛いのはあるが、それ以上に惹かれるのは、感受性が豊かで、ある程度自意識がしっかりしていて、やや捻くれている所だろう。常に、AV女優という職業を続けていくことに、何らかの疑問を持っているかのように、観ている側に思わせるような、どこか翳のある雰囲気を醸し出しつつも、不思議となかなか女優を辞めず、長く活動し続けていて、この仕事が好きか、と聞かれれば、やや間を空けつつ、どう捉えていいかわからないような笑顔を浮かべながら、「好きですよ。」と答える。

AV女優という職業を長年続けるというのは、どう考えても並大抵のことではない。ほとんどの女優は、金目当てであったり、家庭環境のせいでどこか欠落した部分を持っていたりで、AVの世界に一時期足を突っ込んではいても、そうそう何年も業界にい続けることはなく、結婚したりなんかして、辞めていくのが普通である。
AV女優へのインタビューを集めた名著「AV女優1・2」を読んでも、かなり多くの女の子が家庭に問題があって、親が離婚していて貧乏で、というパターンだった。森下もその例外ではなく、酔って暴力を振るっていた父への愛憎入り混じった複雑な感情については、著作においても、本作の最後におさめられたインタビューにおいても言及されている。しかし、一方で彼女は、どことなく他の多くの女優とは異質な感覚を持っているようにも思える。

本作で面白かったのは、松尾が森下の翳の部分にひたすら肉迫しようと、きわどい質問をあえてぶつけ続けていくところだった。しきりに年齢を聞き、仕事への思いや過去についても、天の邪鬼な受け答えをされてもめげずに聞き続ける。それによって少しずつ彼女の本音の部分がなんとなく見えてくるように思えた。なんとなくだが。

おそらく、彼女自身のブログなんかも考え合わせると、こんなところなのではないか。
ある程度の自意識と感受性を持ち合わせているが故に、作家性の強い表現への憧れが一方である。その一方で状況に流されやすい一面があり、居心地のよい現場への愛着も強まっているため、なかなか現在の仕事を辞めるには至らない。本作の終盤では、今後の展望としては作家性の強い作品をある程度選びつつも仕事は継続、流れでアングラっぽい映画なんかに関われれば、というような話をしていた。

ただ残念なのは、演技力が無さ過ぎるということ。ポスト林由美香的な立ち位置にいければ彼女としては嬉しいんだろうが、ちと厳しいだろう。カラミに関しては以前とは比べ物にならんほどよくなってるんだが。あと彼女で面白い作品撮ろうとしたら、自意識をズタズタにする方向ぐらいしか思いつかん。正直。