伊丹十三 お葬式

ここ最近観た映画の中ではベストワンかも。
葬式を巡るドタバタ騒動劇を通して、それ自体何ら本質的な意味を持たないはずの、儀礼やら慣習に振り回される人々のアホらしさが描かれる。その一方でどこかでアホらしいと思いつつも、重箱の隅をつつくような細かい慣習に従わずにはいられない、そこに何かを見出そうとしてしまう、というのが日本人である、とも言えて、そういった微妙なニュアンスを見事に描きつつ、最終的には泣けるオチになっている、というのが凄い。笑いと哀しみの境界をピンポイントで突いているかんじ。カンヌに出品された作品らしいが、世間体に対する強すぎる意識を笑っている部分など、毛唐に理解できるはずがないだろう。大日本人以上に、カンヌに出すのはお門違いも甚だしい映画だと思う。