エロ事師たち 野坂昭如

エロ業界周辺のダメ人間達を描いた作品。彼等のダメぶりが、からっとしたユーモアとペーソスを絶妙に織り交ぜて描かれる。それによって、彼等の「とほほ」感が非常によく伝わってくるところが、おもしろかった。スブやんがエレクチオンしながら死んでいた、というラストは、エロス・タナトスがどうのこうのという文脈がらみであることが容易に予想できて、いまひとつだったが。

全編関西弁で書かれている。標準語と比べて、関西弁に独特のリズム(速射砲のように次々と言葉を繰り出していく感じとでもいおうか)を持った、しゃべくり漫才のスピード感に似たものを感じさせる文体で、テンポ良く読み進めることができた。

「ほんまにこれは、もう処女いうたら、処女屋にしかおらんかも知れんなあ」(p168)

これはなかなか鋭い見方だと思う。
男のイメージする理想の女性像を体現した女なんか現実にはいない、っていう。