ホテル・ルワンダ

もともとユーロスペースのあった場所に新たに出来た映画館、渋谷シアターNにて鑑賞。

脚本の出来がよく、主演の熱演をはじめとして演技も高レベルだし、政治的なテーマ絡みでばかり語られるには、もったいない娯楽性の高い映画なのではないか、といった見方もよくわかる。

しかし、ドキュメンタリーではないとはいっても、ルワンダの内戦問題をはじめて正面から扱った映画であることは間違いないわけで、やはり個人的には、政治的な観点を無視して娯楽性のみに焦点を当てて観るべき映画ではないと思う。

こういった映画にとって重要なのは、おそらく、「鑑賞後の観客に、いかに立ち止まって悲惨な現実について考えさせる契機を与えることが出来るか」、である。

その点で、この映画はかなり成功をおさめているのではないか。
爆撃や内戦の映像をニュースで見る際には、ほとんど心に引っかかりを残すことなく、「かわいそうだなー」で終わってしまうような自分のような人たちに対して、人物描写に力を入れ感情移入を誘うことで、すぐに忘れ去られてしまう情報としてではなく、差別や紛争の現実について多少なりとも当事者性を持って考えさせる、強い喚起力を持った作品だったような気がする。

差別や紛争の現状を正しく認識したとしても、じゃあいったいどうすればいいのか、問題解決の糸口はあるのか、という問いにはもちろん答えられないわけだが、それはまた別の問題。

グリフィスが「イントレランス」で描いたように、人間は同じ過ちを何度でも繰り返すわけで。過去(歴史)から学んで、それを教訓とすることができるようになる日なんか、多分来ないだろうと個人的には確信しているが、「ルワンダ」や「イントレランス」のような、少しでも現状が改善される可能性を信じて作られた映画は、支持したい。

実際は「チーム・アメリカ」の方が好きだけど。