トムソーヤの冒険 マーク・トゥエイン

ピカレスク・ロマンの傑作。読みながら、どちらかといえば優等生タイプだった自分の少年時代を振り返り、なんとなく後悔。万引きぐらいしときゃよかったな、とか思ったり。暗くなるまで泥だらけになって外で遊んだ経験があまりない、というのも今考えるともったいなかった気がする。

所々、ヴォネガットに通ずると言われる、ブラックユーモアの片鱗が見える部分があった。学芸会で、典型的な優等生の女生徒が書いた作文を批判するくだりとか。わざわざ作文を全文掲載して貶すところが、いい。

最後お宝を手に入れて金持ちになったトムが、やや保守化の傾向を見せるところは、さんざん嫌がって嗤い、風刺してきた上流社会の「お上品な伝統」(genteel tradition)に、ある時を境にして、自らはまりこんでいくこととなるトゥエイン自身の未来を予言しているかのようである。