ペンギン村に陽は落ちて 高橋源一郎

ペンギン村に陽は落ちて (集英社文庫)

ペンギン村に陽は落ちて (集英社文庫)

全体として一つの大きなまとまりとして見ることも出来るように書かれてはいるが、実質的には短編集と言ったほうがよいであろう。

特に中盤のサザエさんウルトラマンドラえもん等のキャラクターを用いて書かれた2、3の短編は、中原昌也かと思うほどに随所に、明らかに手を抜き、書き飛ばしたとしか思えない部分があった。ただもちろん高橋氏のことだから、そのへんは自覚的にやっているのだろう。序の部分でテレビ観ながら片手間で書き殴った小説であると言及したり、小説の合間に唐突に芸能人のスキャンダルについての感想を挟みこんだりしているあたりからも、確信犯でやっているのだろうということが窺い知れた。しかし、個人的な読後感としては、正直言って、奇を衒って失敗しちゃったのかなという印象。

表題作「ペンギン村に〜」をはじめとして、例によって随所に散りばめられている、「小説」とは何か、「小説」を「書く」、「読む」とはどういうことか、といった問いに関するメタファーは魅力的だった。ただ、やはり慣れない書き方をしたとしか思えない中盤がいまいち楽しめなかった。