Paul Auster "City of Glass"

オースターのデビュー作。所謂ニューヨーク三部作の一作目。
とてもよく出来ているが、なにかが足りない気が。
筆者がかなり教養があって、様々なメタファーを作中に盛り込んでるのはよくわかったのだが、なんというか、少々わかりやすすぎ、素直すぎな感じがしなくもなかった。優等生ぽいというか。古典へのやたら豊富な言及も含め、教科書的な感じが否めず。

ドンキホーテ、聖書、ミルトン「堕落論」などの古典を、構造主義以降の知識で読み替えて再読することで、そこから新たな何かを引き出そうとしたんだろうけど、作家というより学者とか批評家のスタンスだよな、それって。あとは、推理小説というジャンルそのものについて書く、メタ推理小説みたいな形式をとっていたのも、まあいかにもという感じだった。

もうちょっと、そういった見方ではすくいきれないような、言葉そのものの魅力みたいなものが出てると最高だったんだけど。
終盤クィンが赤いノートに落伍者たちに関する文を書きつけるところなんかは、もともと詩人だったオースターの魅力が出ててよかった。そういう意味では。