誰も知らない 是枝

元々がテレビドキュメンタリー出身だから仕方ないんだろうが、この人の所謂ドキュメンタリータッチと言われる作風は非常に癪に障る感じがして好きになれない。自然な感じの演技というものに、強いあざとさを感じざるを得ないからである。

しかも今作は実話をベースとして脚本が書かれた映画である。今までは、フィクションをドキュメンタリータッチで描くという形式をとっていたため、まだ作品には現実との多少の距離感があったのだが、今作ではそれすら曖昧になっている。

今までよりもさらに一歩、よりドキュメンタリー的な方向性に踏み込んで作られているが、そのことで逆に、さらにリアリティのない映画になってしまっているのではないだろうか。

そんな中でも、柳楽くんの演技には多少うならされるものがあった。何よりも母親役のYOUを見るときの目つきが素晴らしかった。性欲の固まりみたいな目。押尾さんを目指してるだけのことはあるな、という感じ。エディプス的な親子関係を表現した演技でやってる目つきなのか、素なのかはまったくわからんかったが。