虹の彼方に 高橋源一郎

初期の作品はキレがあっていい。まさに自由闊達という感じ。極めて真っ当なメタフィクションなんだが、飽きずに読める。ユーモアのセンスもいいし。初期の方が詩的な側面が強かった気がする。全部読んだわけじゃないのでなんともいえんけど。本作で言うと、「かつて〜であったもの」とか「   」といった表現は、少々わかりやす過ぎる感じもするが、言葉では言い表せない「モノ自体」に詩的言語を駆使して何とか少しでも近づこうとしている試みと言えると思う。中沢のトポロジー理論で言うところのトーラス型のように、中央にある空間(「モノ自体」)の周りをドーナツみたいに迂回し続けるイメージ。ベタではあるけども。