こころ 夏目漱石

サリンジャーライ麦」と比較すると色んなものが見えておもしろいかな、と思う。
どちらも、経済的に恵まれた環境下に育ち、平和な中で高等教育を受けた自意識過剰野郎の主人公が、他に特に悩むこともないので異性問題に悩んでるという点ではよく似ている。ザ・青春小説といったノリ。相違点としては、わかりやすく大雑把に図式化すると、主人公が積極的で女にモテる感じのサリンジャー作品に対して、何も出来ずグズグズしてるけど異性に興味はあるんですといった感じの漱石作品、という差があるように思う。両者の差はそのまま近代におけるアメリカと日本の差と言い換えることができるんではないだろうか。
本作でも、自殺してしまった友人がスウェーデンボルグについて熱く語ってる場面とかがあって、結構笑えたが、一部分にとどまらず、漱石には未読だが仏教思想をメインにして書いた作品もあるみたいなので、近々読みたい。そちらはグラースサーガと比較できるかも。
そういえばK谷野がユリイカかなんかでサリンジャー論を書いてたときに、漱石に肩入れする感じで比較してた気がするが、モテる人間への彼の過剰なルサンチマンが現れてておもしろかった。確か。