ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在証明

数学が弱い人間でもなんとなく分かった気になれるように、ほとんど数式を用いずわかりやすく不完全性定理のイメージや、数学における哲学と接する問題などを解説した良書。

不完全性定理とは、非常に大雑把に言うと、全てのシステムにそのシステムだけでは消化しきれない命題が存在するという定理である。この議論は数学のみではなく他の様々な分野にも応用することが出来るような気がする。単一の論理で世界を説明し尽くそうとするような哲学や宗教の抱える矛盾なんかを考える際の助けになったりとか。カミュ「シーシュポスの神話」や禅、中観派あたりの考え方を論理的に裏書きするために上手く利用できるんじゃないか、という気もする。

後半部は不完全性定理の考え方を発展させて、神の存在証明に取り組んだ部分が中心。ゲーデルカトリックだったらしく、信仰と論理学的に突き詰めて考えていった時の矛盾をいかに解消するのか、という問題が彼の中では特に後年大きかったようだ。正直神の存在証明に関しては、ちょっと無茶かな、という印象を持った。前提を無条件に受け入れろ、ってのはさすがに、ね。