猫に時間の流れる 保坂和志

たまたま猫のいる部屋で読めたのが非常によかった。
良質の猫文学作品の一つだと思う。
後半に収録されている短編、「キャットナップ」は、先日の「子猫殺し」問題との関連で考えると色々と思うところがあった。人間がペットとして飼う、という時点でそこには人間が優位な立場から動物を管理するという側面がついて回るわけで、たとえば野良猫に定期的に餌をやって、放し飼い的に育てるような場合なんかは、数を一定以下に保つために、雄猫を去勢するか子猫をある程度間引き的に殺すか、のどちらかの手段をとらざるを得ない。どちらの手段をとるにしても、ある程度そこには必然的に人間のエゴが入りこんでしまうわけだから、件の子猫殺しに対する、そういった面を無視した上での「子猫を殺すなんて可哀想」、という単純な批判はお門違いもいいところである。
ただ、どちらの手段にもエゴが入り込んでいることを自覚した上で、じゃあどっちをとるのか、となったときに保坂氏や自分はやはり去勢の方を選びたい、というのはある。
そのあたりの微妙な心理を「キャットナップ」は非常に丁寧に描いており、とても共感が持てた。