牧口雄二 『女獄門帖 引き裂かれた尼僧』

掛け値なしの大傑作。とんでもないもんを観てしまったという感じ。
約70分という短い時間の中に、エログロB級映画的な魅力と、芸術性が非常に高いレベルで共存していた。個人的にはこの映画のバカさと芸術性のバランス感覚は完璧だと思う。

男に騙され逃れた果ての尼寺が、なんとびっくり殺人尼寺で、尼達は寺にやって来た男達を皆殺しにしていた、という衝撃的な展開も最高だし、母乳で男を殺すおばさん尼僧、毎夜アヘンを吸うボス、蛇をペットで飼うレズの尼僧と、主要なメンバーのキャラ立ち具合も凄い。終盤気が狂ってからの、主人公の過剰すぎる演技もいい。

その一方で、主人公とボスがアヘン吸いながらトリップ状態で絡むシーンで、襖の奥からどでかい太陽が見えるとこなんかは、非常に画面として美しい。
極めつけはラスト、燃えさかる炎の中、少女の股から血が流れ、回想シーンへと移っていく流れ。完璧。

男の裏切りに遭い続けた女達が集っていた尼寺で、唯一人少女だった彼女が、寺の崩壊と共に女になる。そして舞台は雪の中ボスが男に強姦されかけるシーンへと移る。これほどまでに女の業について考えさせられる映画がかつてあっただろうか。フェミニストはまずこれを見るべきだと心から思う。