2000人の狂人

タイトルに反して、意外と真っ当なお説教映画だった。「未来惑星ザルドス」とかと似た感じ。ふざけてることはふざけてるんだけど、その裏には真面目くさったメッセージ性が透けて見える、っていう。メッセージを前面に押し出すのは恥ずかしいので、スプラッター要素でくるんでみました、って感じ。いまいち。
南北戦争百周年を記念して、南部の町pleasant valleyで行なわれる百周年パーティー。その実態は、迷い込んだ北部の白豚を拷問でブチ殺し、人間バーベキューにしてしまおうという無茶苦茶なものだった云々。全編通じて、軽快なカントリーミュージックに乗せて、白豚を殺していく住民達。拷問のバリエーションと住民達の基地外じみた笑い方はおもしろかったが、結局は北部白人の過去に犯した罪への復讐、といった教科書的テーマが中心なので、なんとも。
真面目な視点で見て興味深かったのは、二人目の白人を殺したときに、それまで爆笑してた住民達が一瞬湿っぽい表情を浮かべるところ。すぐにリーダー格が「音楽を鳴らせ」、と叫んでまたカントリーが鳴り出し、住民も笑い出すんだが、ここには何をこめたかったんだろうか。こんな内容の映画にもかかわらず、復讐の連鎖は何も生まない、とか言いたかった面が少しでもあったとしたら笑えるが。どうだか。
あとは、ラスト実はpleasant valleyなどという町は現存しないもので、百年前南北戦争時に北軍に滅ぼされた町だったのだ、というオチ。まあありがちっちゃあありがちだが、トラウマと創作の関係、といった文脈から捉えると妥当かな、と。
最も印象的だったのは、黒人が一人も出てこなかったこと。北部ヤンキーを殺す南部カウボーイ達、といった構図の中、女・子供は出てきたが黒人は全く出てこなかった。