バーセルミ パラダイス

後期の長編。後期というところがおそらく肝。初期から中期にかけての過剰なまでのアバンギャルドさがやや薄れており、斬新な手法にこだわるのとは違う、新たな面白さを探求しているように感じられる。ただ、正直に言ってその試みが成功しているかというとそれはかなり微妙なところ。
この方向性をもっと発展させていけば傑作に繋がったかもしれない、とは思うが、本作はまだ模索している段階という気がした。
なんというか、高橋源一郎近作に近いつまらなさがある、って感じ。
前衛、前衛で行くと、しばらくたって斬新な手法の追求という手法自体が古びてくる、という段階に行き着く。そこで新しさを、と言うときに出てこざるを得ない産みの苦しみ、というやつだ、おそらく。
悲しいかな、モンティパイソンみたいに鮮度が落ちてきたらスパッとやめる方が、後々残ったもののクオリティはおしなべて高くなる傾向にあるような気がするが、無理を承知であえてチャレンジする姿勢には拍手を送りたい。