小林秀雄 私の人生観

晩年の講演録を文字に起こしたもの。
とにかく琴線に触れまくりだった。読みながら泣きかけた。
人生観というテーマに対し、小林はまずその言葉の意味から解きほぐしていこうとする。「観」という言葉のもつ仏教由来の精神についての思索はまさにかゆいところに手が届くという感じで、読んでいる間、膝を打ちっぱなしだった。
観ることが同時に知ることでもある領域を目指さねばならん、真理よりも真如、truthよりもrealityをこそ重視しなければいかんのだ。
とにかく逃げずに不条理と向き合い戦い続け、やがて自己を征服、そこから全肯定の哄笑が出てくるところまでいく。それだけ。
宮本武蔵の詞の引用もグッと来た。やったことに対して一切後悔はしない、っていう。
まさに永劫回帰を直覚することによる偶然性の肯定である。
道に迷うことがあったらまた読みたい。いずれまた読み返すことになるだろう。