矢崎仁司 ストロベリーショートケイクス

傑作。まず、報われない一途な愛に生きるデリヘル嬢、秋代役の中村優子が素晴らしすぎだった。惚れた。完璧だった。惚れた。居酒屋のカウンターのシーンと、指名先でチェンジしますか?って聞くところが完璧だった。まあ明らかに個人的な感傷が絡みまくってのことなのは明らかだが。あとはアホなOL役の中越典子もよかった。今までドラマとかで見て、一度たりともいい女優だと思ったことはなかったが、はじめていい演技してるなと思った。綺麗は綺麗なんだけどなんか今ひとつ華がない感じが、はじめてプラスに転んだのでは。あとの二人も悪くなかった。主演の四人はいずれも名演。
ストーリーはほぼ原作通り。違いといえば、予想通りオムニバスから、やや群像劇めいた感じにアレンジされていたことぐらい。ラスト海辺で強引に四人を絡ませる演出は別にいらなかったような気もしたが、蛇足というほどでもなかった。秋代が池脇千鶴演じる里子から「私の神様」だという小石を、イラストレーター塔子が「あなたの神様」を書いてという依頼に応じて書き上げた作品と共にもらうものの、小石を「神様なんていらないよ」と言って爽やかに海に向かい放り投げるという締め方は悪くなかった。そこ以外だと四人の物語が交錯するのは、満月のシーンぐらい。これは原作にもあったかも。忘れたけど。まあ天候がらみ、ってのは群像劇の演出としてはベタだから、これといっていうこともなし。
カメラワークにはかなり感心させられた。構図がいちいち計算されているのが伝わってくる感じだった。あまり斜めから撮らない、ってのは基本なのかも。正面、横、後、とどの構図もかっちり九十度刻みという感じだった。あとは画面奥に向かいまっすぐ歩いていくところを撮ったところとか、秋代が墓を通って帰宅するシーンの横移動なんか、見事だった。バストアップがほとんどなく、やや引いたところが中心、というカメラ位置にも好感持った。中越典子がふられる橋の上のシーンの、近いカメラがパンして、振り向いて引き返す加瀬亮の前に回りこむ中越の動きにシンクロするところなんかもよかった。

あとは細かい細部の演出もなかなか。秋代の部屋なんか、よかった。みんな煙草がホープってのは流石にやりすぎだろとも思ったが、かく言う自分がホープの空き箱を集めようとしていた過去があるわけで、何もいう資格はないわな。