廣木隆一 やわらかい生活

メンへラーというか、自意識過剰なちょっとイタい女性を演じさせたら、寺島しのぶの右に出る者はいないということを改めて確認。主人公の性格設定といい、映画全体の空気感といい、今回同様廣木監督とコンビを組んだ「ヴァイブレータ」の変奏曲という感じだったが、相変わらず寺島が素晴らしすぎ。
落語の用語で言うところの「フラ」がある女優だと思う。役柄を演じつつも実際の彼女を想起させる部分があるというか。最近フランス人かなんかと結婚した、ってのもいい話だな、と思う。
トヨエツのダメ男ぶりもよかった。クールな役柄が多い中、これは新境地か。

以前一時期蒲田でバイトしていたことがあったので、映画の舞台となっていた蒲田の地理については多少知っていて、自分の知っている風景をどのように切り取ってくるのか、というところには注目して観ていたのだが、それほどハッとさせられるような所はなかった。「粋」のない浅草、という劇中の表現はなるほど言いえて妙だな、とは思ったが。

ストーリーや台詞回しは、ところどころあざとさを感じるところはあったが、まあ許容範囲内。いかにも意図があると言いたげな手持ちカメラの使い方はいまひとつだったが、基本的に画は綺麗だった。最初走る電車を引きのカメラが横移動で追うところからタイトルが入ってくる、という流れが、二本立てで観たもう一本のストロベリー〜とモロかぶりだったのは笑えた。ベタだなー、と思って。