石井隆 GONIN

やはりヤクザものとやおいは相性が良いみたいだ。それぞれが孤独な一人の人間として向き合う、馴れ合いとは無縁の関係性の中に、ふとしたタイミングでウエットな感覚が入り込んでくるところが、どうにも琴線に触れる。なんなんだろうかこの感じは。
男の仁義と同性愛的感覚の類似、ってのはひとつとても面白いトピックになると思う。

橋本治「秘本世界生玉子」にはそのへんのところが詳しく書かれていそうな感じがするが、まだ読むのはやめておく。


とにかく口より先に手が出る、そんな場面の連続だが、逆にそんな中にこそ、非常に濃密なコミュニケーションが成立しているように見えたのがおもしろかった。男達は皆、会話するように殴ったり、撃ったりしている気がした。
身体性うんぬんとか言ってしまえばそれまででつまらん話ではあるが。

序盤のバッティングセンターのシーンあたりからの怒涛の暴力描写は最高。
ちあきなおみ「赤い花」がまた絶妙。元嫁に渡せなかったテープを仇討ち直前の張り込み中の車内でシャブ打ちながらかけるところは素晴らしかった。曲が聴こえてきて、途中で打つのやめるあたりとか。