M-1グランプリ07について

個人的には、ポイズンガールバンドが圧倒的に面白かったと思うのですが、最下位でした。あと、千鳥も決して悪くなかったような気がしたのですが、こちらも点数は低かったですね。

まず千鳥について大竹まこと、松本両人が「終盤の展開が盛り上がりに欠ける」といった意味の発言をしていたのが気になりました。なぜかというと、彼等は明らかにわざとやっていたと思うからです。ある種のネタの斬新さを追求したがゆえの変化球的な終盤の展開であったと思うのですが、それが点数には反映されない。(まあパターンからずらしてただけですべってた面はあるとは思いますけど)これに対して、ネタ自体は全く面白くないが、漫才の技術面に関しては文句のつけようがないキングコングトータルテンボスが決勝に進出する。(これに関してはオール巨人師匠の練習量が見える云々の評価コメントあり。)

この比較からわかるM1最大の問題点は、ネタの面白さ(その多くは斬新さ、という基準に拠るものであるかもしれません)と漫才の技術面での上手さ、という二つの相容れない評価軸が、100点満点の採点において、各審査員それぞれの勝手な基準で両立している、という点だと思います。たとえば今回の審査員だと、上沼さんはよく基準がわかりませんでしたが、巨人師匠やラサール、カウス氏なんかは明らかに形式面(上手さ)重視、しんすけ松本はどっちともいえず(二つのバランスをとろうとしていた?)、という感じだったと思います。

優勝のサンドイッチマンに関しては、決勝でカウスの前でヤクザネタをやり切ったのが勝因、というのは冗談で、僕の個人的な見方では、両基準のバランスが最もとれていたように見えました。(ある程度上手くて、ある程度面白い。)たとえば去年のチュートリアルのように、技術面、面白さの双方で高レベルのネタであれば、採点基準もブレないと思うんですが、どちらかが欠けて片手落ちになったときに、審査員の基準が全く統一されていないと、まあある種の芸人にだけ有利な判定になってしまうわなあ、という感じでしょうか。

問題は、一人もネタの面白さ重視の審査員がいなかったことです。ポイズンガールバンドというコンビは誰が見ても明らかに、形式面での洗練を目指してはいないはずなので、現行ルールでは永久に勝ち目なしでしょう。そのあたりを考えると、松本の「M1向きのネタではなかった」という発言は、半分はわかるのですが、半分は納得いかないというか、正直に言ってしまえば、「M1の現行の採点基準には向いていないコンビだ」という話なんじゃないか、とすら思います。

今回は特に、彼等もネタ終わりに自信ありげなコメントをしていたように、大嫌いな表現ですがあえて使うと、シュール(!)なネタにしては、客のウケがよかったし、さすがに決勝まではいくかと思ったんですが、フタを開けてみれば最下位。二年前には素人のおばさんにまで負けてますから、二人も悔しいでしょう。来年からはあえて出ない、ってのも一つの選択だとは思いますが、現在のM1の強大な影響力を考えると、まあそれも無理なのかもしれません。

ポイズンに関しては、ネタが斬新であるとか、爆笑を引き起こすような破壊力がある、というわけではないんですが、なんとなく好きなので、もっと評価されてほしいな、と思います。あとM1はどうせやるならもうちょいちゃんとしてほしいです。規模がでかくなりすぎると、若手芸人全体にネタ偏重の空気が生まれそうで、それはそれで凄く嫌なんですが。