千原兄弟 15弱

若い時のライブ作品に比べると、序盤のネタなんかは特に、時事ネタなんかも盛り込んだ敷居の低いものとなっており、そのあたりから随分角がとれて丸くなったような印象を感じもした。そういったネタにはそこまでツボにはまるものはなかったが、「矢ザラリーマン」はなかなか。矢の次に来る音が濁る理由のこじつけ方に笑った。

兄せいじへの当て書きの色が最も濃く出ていた「お蟹さまサポートセンター」あたりから、段々とボルテージが上がってくる。「しょけいだい」「ナイトラウンジ美鈴」「マスカ!?」と、まさにジュニアの笑い、としか言いようがない、死のモチーフを生かしたネタが続く。一瞬観客に恐怖を与えておきつつも、しっかりとまとめた、誤って主電源を落としてしまった、という「しょけいだい」のオチに、7年間という時間の流れを強く実感。あそこは以前だったら間違いなく死んで終わり、という流れだっただろう。別にとがってれば面白いというわけでも、丸くなったらつまらんというわけでもなく、ネタの切れ味自体はまるで鈍っていないのだが、やはり落とし方の変化には意識が行ってしまった。「副賞として」「虫酸」の良作二本を挟み、「通夜通夜通夜通夜通夜」「告別式」「罪と罰」で再び、死や老いのモチーフが。
きわどい設定のネタを見ると、全体的に以前のネタとの違いが目立っていたような気がした。これまでは、ギリギリの状況にいる登場人物の滑稽さを観客が上から見て笑えるような構成をとっていた(そこに時折、その安心してみていられる客のポジションを撹乱するような要素を入れることで、不安を与えつつ笑わせる、という感じ?)印象があるが、今回のネタでは、それぞれの登場人物に対するやさしさが目立っていた。落語的な笑いに変わってきているような。

全体を通しては、単純な構成ながら「ナイトラウンジ美鈴」が最も気に入った。業の肯定。