5日
二時すぎに起きる。昼飯食べて、武蔵境へ。先生と生徒二人と、三鷹天命反転住宅へ。授業でなにをするか考えるため、下見で。

事務員の方に案内していただき、三階の部屋に入る。まず扉を開けた時点で、ギラギラした色彩や、曲線の使い方といった、視覚的なイメージに圧倒される。くらくらして少し酔いそうな感じも。続いて部屋に一歩足を踏み入れると、中央部分の、起伏に富んだ床の感触や、各部屋の床の材質の違いなど、触覚をはじめとする、視覚以外の五感に対する刺激が強まる。さらに、先生が持参したHSSという特殊なスピーカーや、目隠しなんかを使って部屋の中を動きまわってみることで、ますます全身の感覚に、普段なかなか感じないタイプの刺激、情報の入力があり、それによって通常意識しないような身体の微細な感覚に注意が向くようになるのが、ある程度実感できた。裸足で一歩一歩足の裏に感覚を集中して歩いてみたり、薄着で寝転んでみたりと、一通り、まあわりと誰でもやりそうな動き方は試してみたのだが、それだけでも、かなり多くの発見があった。一つ驚いたのは、部屋のぱっと見の異様さに反して、中でしばらく過ごしていると、とても落ち着く感じがしてきたこと。ここで寝たらかなり深い眠りにつけそうだな、という感じがした。

ただこんな風にいくら言葉にしても追いつかない部分こそが重要なんであって、そのあたりの言語化しにくい感覚を上手く掬い上げられるような形の授業にしたいなあ、と思う。

荒川氏の言葉の使い方の異常さ、というのは、小生が今日感じたような、通常の言語で捉えようとすると追いつかなくなるような感覚を、無理やり言語化しているところから来ているのかもしれない、と感じたので、帰りしな地元の本屋に寄って、茂木健一郎の天才対談本から、荒川氏の部分を立ち読みしてみた。

最初から飛ばしまくりの荒川氏の言語感覚に当てられた。五感とかいってるから駄目で、感覚は千でも一万でも、いくらでも存在する、という発言なんかは特にすごいなあと。本や映画などに、長時間集中するのは苦手らしい。むしろ瞬間、瞬間に集中力を発揮するのが得意なそうで、幼少期から、自分が感じた細かな感覚をストックし続けているらしい。その例で出ていたのが、「今日のご飯は昨日のよりも少し赤いぞ、黒いぞ、とか」といった話だった。意味がわからん笑。ただ、今日実際に三鷹に足を運び、またインタビューを通して読んでみて、荒川・ギンズが私たちは死なない、とか死ぬのは法律違反です、とか言っている感じが、ニュアンスとしては、なんとなくわかるような気がしてきたのも確か。合気道オートポイエーシスに言及していた部分も、まあ理解は到底できなかったが興味はそそられる感じだったし、デュシャンやハイゼンベルグとの交流の話も面白かった。人間以降にあらわれてくる生命体のことを真剣に考えている感じがするところが、個人的には一番気になるところ。

北区後夕餉。食後は宇川氏のDVDを観た。糸電話でのstrings of lifeが実にかっこいい。あとは珍しくやたらとメールをたくさんした。諸々の準備で。
朝方授業に備えてブロークバックマウンテンを観た。思っていたのとは随分違う映画だった。観てよかった。