川島雄三 イチかバチか

監督の突然の死により遺作となってしまった作品らしい。
どの人物も、よくキャラが立っており、展開も実に軽快。特に伝えたいメッセージなんぞないからかもしれないが、無駄なシーンが全く無い。それでも、随所に軽いユーモアが挟み込まれており、何度も笑った。
以下ネタバレ。

金を媒介にした騙しあい、という構図は前回観た二本と同様のもの。
ただこの作品では、最終的には、社長、北野、市長の間に固い信頼関係が結ばれ、鉄鋼所の建設が決まるというハッピーエンドを迎えるところが、前二作とは異なる。とはいえ、彼らの間に信頼関係が結ばれるきっかけとなったのは、北野が市長と妾との会話を、旅館の風呂場から盗み見たことにあるわけで、そういう意味では、決して単純な人情噺に回収できるほど甘い物語ではなかった。こういった結末の作品でも、ある程度しっかりと毒を盛ってくるあたりがにくい。