レオス・カラックス ポーラX

カラックスははじめて観た。

劇中音楽と衣装はとてもよかった。
音楽は、特に工場でインダストリアルな爆音ノイズが流れる中、指揮者の指示に従い、複数のドラム、ギターを含む大所帯の編成で演奏している場面がかっこよかった。
あとは、ピエールの着ていたロングコートがとても素敵だったので買いたくなった。

内容は、おフランス映画特有の臭みが、特に序盤は溢れかえっており、少しきつかった。後半はわりと楽しく見れたが、特に何か思うところがあるわけでもなかった。ピエールの狂気を執拗に描写するというよりは、おしゃれな狂気、という感じでサラッと描いてしまっていて、そこまで観ていて切迫感がなかったのが残念といえば残念。

推測だがメルヴィルの原作とは相当違う感じに仕上がっているのだろう。ピエールとイザベルがはじめ宿泊するホテルの名が、ホテルエイハブだったのは、メルヴィルへのオマージュかなにかだったんだろうか。まさか原作でもその名前、ってことはないだろうし。
衣装も含めて、全体的な画面の色づかいとか、小道具の質感なんかはわりと好みにあっていた。立て付けの悪い鉄のドアの音なんかもいい感じが出ていた。
ドヌーブの裸も、何歳当時の出演だかわからないが、なかなかのものだった。二の腕や腰周りの、だらしなさスレスレの贅肉のつき具合には感嘆させられた。
序盤に、婚約者と風呂場でじゃれあう場面で、脱ぎかけのTシャツが顔にかかった状態の彼女にシャツの上からキスをするところも良かった。

90年代後半にして、いかにも昔のフランス映画的な魅力が出ているという意味ではいい作品だったのかも。まあ趣味ではないですが。