プレーンソング 保坂和志

我々が普段日常的にあまりそこに注意を向けないような、非常に微妙な思考や視線の移動、移り変わりを見事に言語化している。
例えば、ある人との会話がふと記憶によみがえることで、その時の風景の見え方がほんの少し変わったりだとか、会話中に相手のニュアンスから様々な雰囲気を感じ取ったりだとか、そういう非常に細かい部分を捉えるのが本当に上手い。
だからこの人の小説は、取り立てて何か大きな事件が起こるわけでもないのに、とてもスリリングなのだと思う。