モンティパイソン総論
おそらくテレビシリーズと映画二本は観終わったので、一応全体を総括しておこうかと思う。
モンティパイソンのおもしろさはどういった点にあるのか、思いつく範囲で箇条書きっぽく列挙してみたい。
・言葉や物事の意味、役割をズラす、反転させる、あるいは無意味化する
これは完全に定番のテクニックだった。なにもパイソンに限った話ではなく日本のお笑いの基本でもあるんだろうが。ただ、特に無意味化の分野では彼等の面白さは他のものと比べて非常に際立っていた気がする。いわゆるナンセンスというジャンルなのかな。強烈に覚えているネタとしては、寝具店売場のコントで、店員の一人が「マットレス」という単語を聞くと反射的に袋をかぶってしまう、というものとか。ズラし・反転は例が多すぎて書ききれん。
・タブーへの言及
これも完全に定番。あらゆるタブーに言及していた。黒人ユダヤ人障害者メーソン中国人ゲイレズなどなど。日本で同じことをやったらとんでもない問題になるだろう。イギリスの寛容さはすごいと思う。日本ももう少し冗談のわかる人が増えるといいんだが。
・ネタとネタのつなぎの多彩さ / 天丼
大体三十分の尺の中に5、6本のコントが入っているんだが、それぞれに直接の関係はないコントが様々な形で連続していることがほとんどだった。DJの曲のつなぎ方に近い感じ。
そして、そうやってコントを繋いでいく中で、冒頭のネタに出てきた人物が後の別のコントで再び登場するという天丼が、かなり定番のパターンとしてあった。もっとすごいのになると前の週のネタの人物が出てくる場合があったり、全シリーズ通じて要所で繰り返し出てくるキャラクター(鳥肉持った騎士)なんてのもいたりした。
・メタ的視点
前の天丼という部分とも関わってくる話だが、別コントの人物が出てきた場合に、そこにメタ的視点からツッコミを入れるというのが一つのパターンだった。
それ以外でも、様々なネタで随所にメタ的視点からの台詞が挿入されることがあった。
・高い教養
古典を皮肉るネタは定番中の定番だった。笑えたやつで言うと手旗信号で古典の名場面を再現するネタとか。詩人や精神科医、芸術家、学者などを皮肉るネタもパターンの一つとしてあるのだが、それらはどれも一応作品、著作は知っているという、ある一定レベルの教養があることを前提としたネタ作りのものが多かった。単に彼等がかなりのインテリで、主な視聴者層もひねくれたインテリだったというだけのことなのかもしれないが、ここも日本のお笑いと比較したときの大きな差の一つだと思う。単に勉強不足なだけかもしれんが、あまり日本では教養を前提とした笑いにはお目にかかったことがない。まあ別に教養を前提とした笑いが好きというわけではなくて、むしろあまり好きではないんだが。
・他のTV番組の形式をなぞる
これも定番中の定番。ニュース番組とか討論番組のフォーマットを使いつつ、最初にあげたズラしなんかを交えて面白くする、っていう。
・オープニング / エンディング
単調にならないためだろうが、毎回のようにタイミングやパターンを入れ替えていた。エンドロールにも必ず遊びの要素が入ってたし、三十分の枠のすみずみまでギュウギュウにアイディアが詰込まれていて、非常に「濃い」な、という印象を全体を通して強く感じた。それだけエネルギーのある集団だった、ということなんだろう。食事とか、何かをしながらではとてもじゃないけど見れない感じがしたし。