ドストエフスキー 地下室の手記

これも修行の一環で。ドストエフスキーはあまり読んでなくて、これ以外だと「罪と罰」ぐらい。集中力がないからか、長い小説があまり好きではないので、カラマーゾフなんかもいまだに敬遠している。そんなことはどうでもよくて、この小説なんだが、主人公のダメぶりが、かつてこれほどまでに完全に反面教師という言葉が当てはまる主人公がいただろうか、と言うほどにひどい。本当は友達が欲しいくせに半端にプライドが高いせいでつい強がってしまう、というのもベタだなーという感じだし、何よりひどいのは風俗嬢に本気で説教してしまうくだり。あくまでも演技だから、という体ではじめといて気づいたら完全にマジになってる、とかどうしようもない。かなり笑えた。どうでもいいが、四十歳ニート引きこもりの根暗そのものとしか言いようがない主人公が引用してる詩の作者の名前がネクラーソフ、というのも笑えた。
ドストエフスキーが牢屋にぶち込まれた時に、思想なんか大したもんじゃないな、と気づいて、その後書かれたこの作品から、作風が激変したらしい。牢屋で気づく、というのは非常にリアリティがあるな、と思う。
あとこれを書くに至った状況としては、社会への不安と、当時の嫁と愛人うんぬんの女性問題と、彼自身が味わっていた色々な葛藤なんかがあって、それを書くことでなんとか鎮めようとしたのかな。知らんけど。
私小説的なところは皆無。当時の国内の社会状況を勘案して、一つのステレオタイプとして、こんなやばい奴が絶対出てくるだろう、という感じで書いたようだ。