豊田利晃 アンチェイン

監督と個人的な交流のある四人のボクサーを追ったドキュメンタリー。ドキュメンタリーは客観的視点に立たないと、とかよく言われるが、こういう映画を観るとそういう意見はある面では説得力あるが、あくまで一面的な意見にすぎず、結局はそんなもんケースバイケースだ、と思わされる。
ただ、映画本編を、ガルーダの最終戦を最後まで収録せずに終わらせる、という選択は、対象との適度な距離感を保つ効果があって、正解だったような感じがした。最終ラウンドまで収録してしまうと、少し湿っぽくなりすぎていただろう。感傷的な部分は必要ではあるんだが、強すぎてもいけない。そういう意味で、いいバランスだった。おそらく監督も、個人的に交流のある人物のドキュメンタリーをデビュー二作目に持ってくることを決めた時点で、あまり感傷的になりすぎないように注意を払うことは意識していたんだろうと思う。
レンタルDVDで鑑賞したのだが、特典映像にはガルーダの最終戦が、終了のゴングが鳴るまで収録されていた。これを本編に入れなかったのは正解だったと思うが、この映像には感動してしまった。勝てないと分かりきっていても一歩も退かずに前進し続けるガルーダには、あてられた。正直。グッときた。

ポルノスター同様、結局は「矜持」の問題に行き着くんだと思う。アンチェイン梶が精神病院にブチこまれるまでの流れには、プライドを守ろうとして、理想と現実の折り合いがつかなくなってしまうと、こういう結果になってしまうことも往々にしてあるのだ、ということを再確認させられた。紙一重なんだろうな、というのが伝わってきて、考えさせられた。