中原昌也 待望の短編集は忘却の彼方に

雑誌掲載作品を集めて、そこに書き下ろしをいくつかプラスする形で構成された短編集。
かなり短めの一話完結のストーリーからなり、所々に挿絵がはさまれるという辺り、内容とあわせてかなりバーセルミに近い。柴田高橋源一郎対談で触れられてたことだが、むしろ中原のがバーセルミっぽさが強く出ているかもしれん。元々文学畑の人ではなかったというあたりもかぶってるし。

内容としては、例によって書きたくないんだよ俺は、という芸風は崩していない。B級映画的な、必要以上に俗悪な描写や比喩も相変わらず、という感じ。もちろん一つ一つ小ネタの発想は違うし、なんだかんだで笑えるんだが、まとめて読むとどれも同じパターンの変奏曲に見えてしまう部分はある。やはり。まあそれはバーセルミにも言えることだけど。

彼の作品は、新刊が出るたびにスタジオボイスやら新聞の書評やらで大きく触れられるが、誰が評しても結局似たり寄ったりのことしか言えていないように思える。少なくとも自分が目にした限りの書評においては。
これは評者の問題というよりは、彼の作品自体が批評的でありかつ、それ自体への批評を跳ね付ける要素をあらかじめ作中に含んでいるからであると思われる。そういう作品を批評しようとすると、紋切り型になるかダダ滑りになるかのどちらかにしかならん気がする。とすると、バーセルミで卒論、というのはまずすぎる選択だったのではないか、ということになる。うーん。どうしたもんか。それこそ、語りえぬものについては沈黙しなければならない、ってやつじゃないのか。

本になってるやつで未読のものが二冊ほどあるので、それも近いうちに読んでから判断したい。色々と。長編ならまだ読みようがあるはず。短編よりは色々とこじつけやすいし。