井口昇 クルシメさん

途中までは、対人関係・コミュニケーションで誰もが多かれ少なかれ体験するような齟齬をうまく誇張して描くことで、ユーモラスかつそれだけに終わらない、何か考えさせられる部分も残るようになっているところがおもしろいなーと思いつつ観ていた。
主人公二人の語らいを笑ってしまう一方で、否定し切ることも出来ない感じというか。
ただ、終盤はぶっ飛びすぎてて意味不明だった。果たして舌が伸びることに何がしかの意味や意図が込められているのか否か。全くわからん。舌で攻撃する場面も謎。

無理矢理こじつけるなら、自分の最も隠したい部分にこそ攻撃性が秘められている、という点において主人公二人は共通しているようにも思える。好きな相手にひどいことをしてしまうという病癖と、長い舌による攻撃はそこで繋がってくるのかもしれない。
愛と憎しみの入り混じった感じというか、知ったかぶりで言うとクラインあたりの発想に近い空気があるかも。愛する対象に対するアンヴィバレンスな気持ちが反映されているという感じか。二人が固い絆で結ばれることを予感させるラストは、傷つけあって剥き出しのコミュニケーションに踏み出した二人が、相互に信頼を得た、っちゅうことかな。
まああんま考えずに思いつきで撮ってる気もしなくはないが。

手持ちカメラを多用してるあたりは、AVで培われたところなのか、臨場感出ててよかった。時折魚眼レンズを使っているシーンがあったのも、なかなか珍しい雰囲気が出ていておもしろかった。