フィリップ・K・ディック ユービック

半生命という設定がまず上手い。お得意の夢と現実の境界があやふやになって破滅していく主人公、という展開とのかみ合わせが抜群。
ユービックの語源が「神の偏在」ってあたりもオカルトに片足突っ込みつつあるのが出ていてよい。単純に読んでておもしろいってのもさすが。終盤時間の流れを操るうんぬんの話になってからは、プロットだけ見るとジョジョのボス戦みたいなノリだった。

半生命と絡めて熱機関としての人間、って視点が出てきて、ラスト近くユービックの成分がどうしたみたいな話で疑似科学っぽい発言が出てきたりするあたりは注目したい。

あとは、夢か現かわからんしがんばってあがいたところで何になるんだろう、と考え始めちゃうと、そんなことより女だろ、っていくところもよし。
浮世は夢、ただ狂へ 一休さん ってやつだ。

神の不在がもはや明らかな事実として受け入れられている時代において、半生命に活力を与える物質として登場するのが、ユービック(神の遍在)という名のスプレー(商品)である、っていうのは皮肉が効いている。