マルキド・サド 悪徳の栄え 上

渋沢セレクトによる妙訳の前半部。解説にも出てたが悪徳の限りをつくすジュリエットを描く本作は、逆説的な教養小説と言えるだろう。徹底して悪徳にはげむことこそが個人的な徳である、という所から、ニーチェなんかに繋がってくる感じもする。具体的な変態プレイの描写と、なぜ悪徳にはげむのか、に関する思想、理論面からの考察パートの二つが中心。考察パートは宗教、道徳観念、法といったもんを相対化していく方向性。まあ今の視点から見れば自明のことだが、だからこそじゃあなぜ悪徳にはげまないのか、ってとこから考えていく必要があるだろう。逆に。ツァラトゥストラ読み終えたらちゃんと考えねば。
変態プレイの描写は下世話な興味から単純に楽しめた。澁澤氏の古い言い回しを多用した独特の言葉選びも笑えた。ケツの穴を若気と言ったり。こちらはマゾッホとの比較、SM論につなげていきたい。とりあえずSとMは対立関係ではない、ってのは確認しときたいところ。