塚本晋也 悪夢探偵

非常に良くできていた。不満を挙げるとすればラストがやや物足りない感じだったことぐらい。ただそれもシリーズ化を予定しているということを考え合わせれば、仕方ないかなという感じで、特に目くじら立てるほどのもんでもない。
松田龍平演じる悪夢探偵が、嫌々ながらもhitomi演じる新人刑事らの要請によって、他人の夢に入り込み、そこで人々の心に侵入して自殺を起こさせている「ヤツ」と対決する、という筋書き。
フロイトなどのトラウマがらみの文脈にあまりにもぴたっとはまっている感じがした。
共同脚本書いてる人がいたからその人の入れ知恵って可能性もあるし、塚本が勉強家なのかもしれないし、天然で直感的に把握してるってことかもしれん。どうでもいいが、塚本だと最後のパターンって可能性もありそうだ。カオス・狂気・不条理の表象としての怪物の描写は非常に上手いな、と思った。凄まじい速度と強度で襲ってくるが、姿は決して見えない。見事にメタファーとして機能しつつ、従来の塚本作品同様、ビジュアル面でもすさまじい迫力だった。
トラウマがらみとお得意の身体性のテーマの絡み方も面白かった。ラスト、他人に踏み込んでいくことに対して臆病な松田に対しhitomiが他人の心の中に入るのは嫌だとは思わないよ。絶対。みたいな事を言うシーン。松田が前、hitomiが後で川沿いの細いところを縦関係で歩きながら、松田振り返って、その後の会話。二人の微妙な距離感とラストのやりとりは、次作以降への布石も兼ねて、二人の恋愛関係が生まれることを示唆する感じだった。トラウマ・狂気・不条理と向き合い続けた結果、どうなるのか、って部分で締め方には期待して観てたんだが、結局恋愛かよ、とやや興醒めしてしまった。もちろん、それが誤った結論というわけではなくて、むしろ大正解だと思うんだが、今の気分としてはそこに逃げて欲しくなかったな、というのが正直なところだった。
hitomiはスタイルはよかった。多少サービスカット的な部分もあったが、特に足はやばかった。ただアップで写すと顔がなぜかMEGUMIに激似だったのには若干引いた。劇場出たところで女性二人組も同じこと言ってたし、かなり似てたと思う。