ビリー・ワイルダー サンセット大通り

古典!
映画作りを題材にした映画、という時点でメタ的だし、無声映画時代のスターが忘れ去られていく状況を風刺した、アンチ・ハリウッド的なストーリーをハリウッド映画として撮った、というのもヒネリが効いている。さらに、鑑賞後に知ったことだが、配役がかなり現実に即したものであったらしく、その意味でも実に興味深かった。落ち目女優役は本当に落ち目になった無声映画時代のスター。しかも劇中劇として彼女の自宅の居間で上映される、若かりし頃の作品、というのも、実際に撮影されてお蔵入りした作品らしい。執事の大成し損ねた映画監督、という設定も、役者の現実そのまま。そこらへんを鑑みると、本当に恐ろしい映画である。落ち目女優役の鬼気迫る演技は特に恐い。
いささか屈折した形であるとは言え、なかなか目を向けられない、忘れ去られた過去のスターに対する敬意を表した作品であることは間違いないだろう。

擬似ドキュメンタリーに関する議論を久々に思い出したりもした。ジャンクーしかり、こういう役者の実人生の厚みが、作品の魅力として染み出してくるような意味での、ドキュメンタリー的要素のある作品は好きだ。
志ん生が酒の噺をやると輝き、寺島しのぶがダメ女を演じると輝くのと一緒。
「フラ」ですね。「フラ」