アーサー・ペン 俺たちに明日はない

1930年代のクライド・バーローとボニー・バーカーの実話を元に描かれた、アメリカン・ニューシネマ第一号作品。
クライドがインポである、というところが非常に引っかかった。彼が銀行強盗を繰り返すのは、ある種男性性の誇示という側面があるのではないかという気がした。マッチョイズムというか。岸田秀が言うように、「人間とは本能の壊れた動物である」ので、幻想によってのみ勃起することが出来る。厳密に調べるのはめんどくさいのでしないが、現実にクライドがインポだったかどうかは微妙なところだと思う。この映画は67年公開。その頃すでにアメリカ人男性が素朴なマッチョイズムに浸って生きることはかなり困難になってきていたのだろうか。ラスト近く、ボニーが自分達バロー・ギャングを美化するような手記をクライドに読み上げ、それをいたく気に入ったクライドが新聞社宛に記事を投稿することを薦め、後日その記事が載った新聞を二人で眺める場面に至る、という展開がある。この場面でクライドの性的不能が突如治る、というのが非常に象徴的な気がする。ボニーの恣意的な手記によって、クライドが疑わしいものだった自分の男性性を認めうるような幻想を完成させ、エレクチオンに成功した、と捉えるとすごくすっきりする。気がする。

フェイ・ダナウェイが美しすぎだった。久々に外人に惚れた。ただ後日どんな顔だったか確認しようとしてググったら現在のババアになった顔が出てきて、もちろん年にしては美しいんだがそれでもまあちょっときつい感じになっていたのは、非常に悲しかった。ラピュタで主演映画観終わった直後に現在の中川梨絵を見てしまった時以来の悲しさ。