楳図かずお 神の左手悪魔の右手

論理的整合性を一切無視したストーリー展開は、所々笑ってしまいそうになる部分もあったが、一貫して作者の異常なまでのテンションが全てのコマからひしひしと伝わってきた。全ての物語は、主人公である想の子供っぽい空想が現実化したものであり、そこで誕生した怪物や霊を倒すのも、想が姉などの他人の夢に入り込んでのことである。つまり、全ては想の妄想にすぎないという見方もできるわけだが、真の意味で子供の心を忘れていない作者には、子供の想像力が現実を変えてしまうことが全く不自然なこととは感じられないのだろうと思う。というか、ひょっとすると、作者には本当に現実がこんな風に見えているのかもしれず、そうだとするとリンチなんかと近いものを感じる。