筒井康隆 ヨッパ谷への降下

表題作の終盤、ヨッパグモの巣に主人公が降りていく場面での、分裂病すれすれの壊れた文体が見事。解説で河合隼雄氏も言っていたように、落下ではなく降下、というところがミソなのだろう。分裂病的な世界に作品としては到達しているんだけど、作者自身は正気を保っていられるのはそのためで、それが所謂病因論的ドライブというやつなんだろう。
表題作以外では「薬菜飯店」、「エロチック街道」、「秒読み」あたりがよかった。