川島雄三 人も歩けば

フランキー堺主演、落語的な喜劇映画。いいサゲのついた人情噺という感じで、たくさん笑ってすっきりして家路につけるんだとばっかり思って観ていたら、おどろきの展開が。

しかしフランキー堺はいい役者だなあ、と思った。ああいう喜劇を演じて画になる俳優というのは、最近の若い俳優に果たしているのだろうか。全く思いつかない。今の芸人は、喜劇人の匂いがする人がほとんどいないから難しいだろうな。今だったら矢野兵頭の兵頭さんぐらいかな。違うか。以下ネタバレ。


こちらの場合、これはヒッチコックなんかの諸作品にも当てはまる話だろうけど、監督自身がフロイトの議論をある程度見聞きしている以上、その人が作品作りのなかで、無意識に、これこれこーいう男根の象徴として解釈できるイメージを用いている、とか解釈するのは難しい面があるだろう。それこそ、わかりながら作っていたら、あえて意識しつつそこからズラしている場合、あえてフロイトが言うとおりに使ってる場合、パロディとしてやってる場合、などが容易に考えられるわけで、そのいずれも精神分析理論でこじつけてもしゃあない気がする。あーこれは男根の象徴、はいはい、とか思いつつ、ほら、こうすりゃいいんでしょアハハとか言って撮っている作品に、素直にフロイト理論的な解釈をほどこすのはアホ臭いだろう。ヒッチコックでいえば、北北西の最後に電車がトンネルに入るのは、ヘイズコードあるけど、要は二人がベッドインしたことの隠喩ですのよオホホ、って話らしいし、この映画のオチも明らかにそれに似た、フロイトを小馬鹿にしたようなノリが感じられた。

この作品もお金の話だった、そういえば。フランキー演じる桂馬の嫁、姑あたりの態度豹変振りなんかは、しとやかな獣にもあったノリ。他のを何本か観てみないとなんともいえないが、お金のモチーフは頻出なのかも。