川島雄三 わが街

ネタバレ。

笑いの要素が予想よりかなり少なかった。作品全体の雰囲気は非常に陰鬱。
露骨に精神分析的解釈が当てはまりそうなプロットだった。
フィリピンでの経験が外傷となっている男が、嫁、娘とその旦那、孫とその旦那、と三世代にわたり、彼等を自分の人生の物語に引き込もうとする。最初の三人はそのために死ぬのだが、それでも孫の世代でまた結局同じ過ちを繰り返してしまう彼が、その反復強迫からようやく逃れることが出来たのは、自らの死をもって、であった。チャンチャン、みたいな話。劇場で一緒に観ていた人がほぼ全員主人公が死ぬ年齢と同世代にしか見えないおじいちゃん達だったため、終了後複雑な気分になった。自分なら年とって死を意識するようになってから観に行きたいタイプの映画ではないが。

子供、というのも貨幣同様、肛門期的な対象らしい。この人の映画は、脚本を他の人が担当していようとも、根源的な部分では全て一貫したものがある、ということは言えそう。